小動物用核磁気共鳴イメージングシステムの運用

OISTで新規に導入した小動物用核磁気共鳴イメージングシステムは、高度な生体情報の解析を可能にします。

 この度OISTでは、小動物における生体の代謝や機能といった高度な生体情報の解析を可能にする、小動物用核磁気共鳴イメージングシステムを導入し、施設の運用準備を開始しました。解像度の高さを決める静磁場強度において、最高レベルの性能を持つ同システムの導入は、国内において本学が2例目です。現在、システム利用に向けて学内での調整を進めており、将来的には学外機関の研究活動にも寄与するものと期待されます。

    臨床画像診断で広く用いられている核磁気共鳴撮像(MRI)は、生体を傷つけることなく、内部を可視化する診断機器の一つです。MRIは、主に生体内の水素原子核の磁気共鳴現象を捉えます。磁気共鳴現象とは、磁場の中で原子核が特定の周波数の電磁波と共鳴を起こす現象のことを指します。MRIでは、この共鳴によって生じる電磁波の強度と周波数を基に物質の違いを画像化します。そのため脳や内臓、筋肉など、水素原子を多く含む水が豊富な領域において、鮮明な画像が得られ、脳腫瘍や脳梗塞の検出に優れています。画像の元となる電磁波の強度は、用いる静磁場の強さ(テスラ)にほぼ比例し、得られる情報量に大きく影響します。医療用としては1.5テスラのMRIが広く普及していますが、本システムは、11.7テスラという国内最大磁場強度を誇り、極めて多くの情報を得ることができます。そのため、本システムはマウスなどの小型の動物においても、形態情報のみならず、代謝や機能に至る様々な生体情報の解析に優れた性能を発揮します。

    システムの導入に尽力した、山本雅教授の細胞シグナルユニットは、マウスモデルを用い、がん、神経疾患、免疫疾患、および糖尿病や肥満のメカニズムを分子レベルで解明することを目標としています。そして本システムを用いることで、特定の遺伝子に変異をもつマウスの体内で、実際にどのような変化が起こっているのか、同一個体において繰り返し、長期的にその変化を追うことが可能となります。

    OISTでは本システムを最大限活用し、研究成果に反映するため、専任のスタッフを配置しました。具体的な運用方法については、現在協議が進められており、今後の研究活用 に期待が寄せられます。

西岡 真由美

 

研究ユニット

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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