2013-11-21

学生、故郷での発見に大いに貢献

 この度、フランス、中国、米国出身者が協働で取り組んだ生物多様性・複雑性ユニットでの研究により、大変貴重なアリ属の新種が発見されました。

 2013年6月に同ユニットは中国雲南省シーサンパンナでアリ収集を行い、22,000体のアリを採取しました。シーサンパンナへの旅は、生物多様性・複雑性ユニットのベノワ・ゲナー研究員が先導し、OIST大学院生の劉聰(リュウ・ツォン)さんと当時リサーチインターンであったベンジャミン・ブランカードさんが同行しました。

 シーサンパンナから持ち帰ったアリの標本の中からは、大変稀少なBannapone属の働きアリが2体見つかりました。Bannapone属は25年前にたった一体の女王アリによって知られるようになりました。今回発見された2体の標本は、Bannapone属初の働きアリの発見だけでなく、以前女王アリから確認されていた種とは明確な相違点があり新種であることが判明しました。「標本を一目見たときから実に珍しいものだと分かり、間もなく15年来発見されていなかったBannapone属のアリであると断定できました。聰さんの仲介とシーサンパンナの人々の協力をなくしては新種のBannapone scrobicepsの発見はなかったと思います。」とゲナー研究員は振り返りました。

  OIST博士課程プログラムのラボ・ローテーションを同ユニットで行っていた劉さんの存在は、シーサンパンナに行くことを決定付けた大きな要因でした。劉さんは、修士号取得中にシーサンパンナでイチジクコバチについて研究を行った経験があり、アジアで多様な種を集められる場所を探していたエコノモ准教授にシーサンパンナへ行くことを薦めました。シーサンパンナに着いてからは、現地での劉さんのフィールド経験と知人たちの協力が採集場所の選定や、現場めぐりの大きな強みとなりました。

 Bannapone scrobiceps の科学への貢献はこれだけではありません。生物多様性・複雑性ユニットは、2体の標本のうち一つをBannapone属が属する科の進化学的関係を研究しているアメリカの共同研究者に送りました。送った標本は、Bannapone属のアリの中で唯一DNAを抽出できる個体なので大変貴重な研究材料であり、謎に多く包まれたBannapone属に対して新たな発見をもたらすことが期待されています。

 現在、劉さんは細心の注意を払いながら残りの標本を一つずつ見分けています。すでに中国で発見されたアリの記録が数体更新され、他にも新種の可能性がある個体が発見されているそうです。

(五十嵐 杏南)

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