沖縄県出身の島袋静香博士、科学技術分野の文部科学大臣表彰の受賞が決定

ADHDをもつ子どもの保護者向けプログラム開発に対する大きな貢献が認められました

Shizuka Shimabukuro

科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を表彰する「科学技術分野の文部科学大臣表彰」の令和6年度受賞者が、4月9日(火)、文部科学省から発表されました。このうち、科学技術の振興に寄与する活動を行った者が対象の科学技術賞(科学技術振興部門)で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の島袋静香博士が選出されました。島袋博士が携わる、注意欠如多動症(ADHD)の特性のある子どもの保護者向けプログラム開発への貢献が高く評価されたものです。表彰式は4月17日に文部科学省で執り行われる予定です。

沖縄県那覇市出身の島袋博士は、沖縄キリスト教短期大学を卒業後、国費でアメリカの大学へ進学し、家族療法学で博士号を取得しました。2010年からOISTの発達神経生物学ユニットで研究をしています。「沖縄を含めて日本には心理社会的支援による治療に限界があります。OIST着任当初から、注意欠如多動症(ADHD)を持つ子ども、その親や家族へ向けた支援の必要性を強く感じていました。そこで2013年に、科学的根拠に基づいた保護者支援プログラムの開発に着手しました」と、島袋博士は当時を振り返ります。ADHDは、神経生物学的要因に起因する疾患で、約5-7%の学齢期児童が影響を受けていると推定されています。ADHD支援の一つに、保護者に行動療法を取り入れた子育てを学んでもらうペアレント・トレーニング(ペアトレ)がありますが、日本にはADHDに特化したペアトレや、それを提供できる人材が不足しているのが現状です。

一連の研究は、ADHDに特化したペアトレの考案と、少人数の参加者に対するそのパイロット試験から始まりました。ペアトレプログラムの事前事後研究でその有効性を確認した後、二度の無作為化比較試験で受講者(母親)への効果を実証しました。行政や教育委員会との連携も積極的に行い、プログラムの普及に向けて、社会実装に必要な人材育成や実施の仕組みづくりにも取り組んできました。現在は、ペアトレプログラムを普及するための人材育成に取り組みながら、沖縄県内の教育委員会と連携して、公立の小学校でペアトレと教員向けビデオ教材を使った支援を実践する研究を行っています。

島袋博士は受賞決定の報せを受け、「長年の研究が、社会課題の解決に資するものであると認められ、こうした高い評価をいただけたことをとても嬉しく思います。これからの研究の励みになります」とした上で、今後も、ADHDを持つ子どもや家族が、早い段階で気軽に支援を受けられる社会環境を整えていくための実装研究にさらに力を入れていく予定です。「社会の一人ひとりの特性を皆で理解して助け合うことのできるコミュニティの構築に、引き続き貢献していきたいです。ここまで研究を支えてくれたゲイル・トリップ教授や、研究ユニットのメンバー、研究にご協力いただいた方々に深く感謝します。また、資金面で本研究を支えてくれた科学研究費助成事業及びOIST Innovationチームにも感謝の気持ちを伝えたいと思います」とコメントしています。

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