太陽光発電分析の標準化:再生可能エネルギー発電の変動に対する解決を模索

世界の太陽光発電の変動性評価につながる新手法。

Solar panels

再生可能エネルギーへのシフトは、化石燃料への依存を減らし、よりクリーンで持続可能な代替エネルギーを得ることにつながります。しかし、その使用と開発が進むにつれ、新たな課題が浮上しています。例えば、太陽光発電プラントは、天候やその他多くの環境条件に左右され、これらの発電所からの電力の出力は一定になりません。 

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の非線形・非平衡物理学ユニットを率いるマヘッシュ・バンディ教授とネゲヴ・ベン-グリオン大学のゴラン・ベル教授は、太陽光発電システムから生み出されるエネルギー量の変化を予測する方法を模索していました。この度、学術誌『Physical Review Applied』に掲載された研究では、様々な地域で観測される明確な発電量の変動を考慮に入れ、太陽光発電所での発電量の経時変化を研究する方法を開発しました。 

課題はグリッドの統合  

 現状、電力システムは、安定した電力を供給する電源の組み合わせに依存していますが、電力の需要は一日を通して変動します。課題となるのは、発電量の変動(入力側)と電力需要の変化(需要側)のバランスをとることです。ガスタービンとエネルギー取引は、需給の安定化に役立ちますが、安定した電力供給は、病院やデータセンターのような電力の中断を許されないような業務形態のユーザーにとってとても重要です。しかし、電力網には貯蔵能力がないため、停電を避けるためには生産と消費を一致させる必要があります。  

風力や太陽光のように変動性の高い再生可能エネルギーを送電網に組み込む場合、「送電網統合問題」が発生します。これらのエネルギー源は、従来のエネルギー源と比較して、その変動性と不確実性のために、課題に直面することとなります。 

需給を監視するセンサーを備えたスマートグリッドは、必要な場所に電力を迂回(うかい)させたり、エネルギー使用量を微調整したりすることができるため、解決策の一部となり得ます。しかし、そのようなネットワークを設計するには、様々なエネルギー生産のシナリオを理解しなければなりません。太陽光や風力のような再生可能エネルギー源は予測が難しいため、注意深く分析し、供給、需要、技術のバランスをとる必要があります。 

場所による日射量の変化  

 研究では、太陽光発電出力の変化を調べるために「パワースペクトル」という概念を用います。パワースペクトルは、世界中にある個々の太陽光発電所の異なるタイムスケールにおける発電量変動の定量化と、太陽光発電システムの効果的な計画や運用に役立ちます。しかし、雲の量や空気中のちりやほこりなどの環境要因の変化によって、エネルギー出力が断続的で不確実になるため、異なる太陽光発電所間で測定値を比較することは困難です。 

今回、バンディ教授とベル教授は、2019年に発表した研究を発展させました。その研究では異なる場所での太陽光発電の変化を計算するための晴天指数を分析していました。晴天指数は、晴天条件下で地表に到達する総太陽射量を示します。この指数は、気象学者や研究者が、雲やエアロゾル、その他の大気条件によって、理想的な晴天条件からどれくらい逸脱するのかを理解する際に役立ちます。  

「風力発電では、このような変動を理解するのに大気乱流理論が役立ちます。というのも風力タービンの発電量は直接風速の3乗に比例するということが(大気乱流理論より)わかっているからです。しかし、太陽光発電にはそのような関係は存在しません。つまり、太陽光発電の出力変動を予測する体系的な方法や理論的な枠組みが存在しないのです」とバンディ教授は言います。 

「私たちの分析では、特に地球表面で測定された放射強度を調べました。この放射強度が時間とともにどのように変化し、予測された晴天指数の条件から外れる要因によってそれがどう影響されるかを理解したかったのです。これまでは、異なる地域間の太陽放射を比較する際、これらの要因を考慮したベースラインの研究はありませんでした。」 

OISTの非線形・非平衡物理学ユニットを率いるマヘッシュ・バンディ教授
OISTで非線形・非平衡物理学ユニットを率いるマヘッシュ・バンディ教授は、太陽エネルギー生産の複雑なダイナミクスを研究しており、特に、異なる地域や時間経過によって観測される発電出力の変動に焦点を当てている。

 太陽放射照度の変動は、晴天が仮定された場合におけるその位置(緯度)のシグナルである晴天シグナルと特定の環境要因に依存します。晴天シグナルは位置(緯度)と日照時間に依存するため予測可能ですが、大気の性質に影響するような環境要因は予測が不可能です。 

研究チームは、ネゲブ砂漠とインド洋の赤道に設置したブイの2地点のデータを使い、晴天シグナルとこれらの地点で実際に測定された晴天放射シグナルを計算しました。その結果、頻繁に起こる太陽放射の変化は、予測不能な環境変化と関連しているのに対し、中間的な頻度で起きる変化は晴天パターンと関連していることが明らかになりました。 

この新しい方法を使うことで、将来的には、太陽光発電所の規模や、エネルギー吸収に影響する特定の要因が、様々な場所で太陽光発電にどう影響するかを研究できるようになります。これは、エネルギー変動が場所によって異なる理由を理解するのに役立つでしょう。場所が異なることを考慮に入れた場合、不規則なエネルギーレベルの変化が極端でなくなる場合もあれば、持続する場合もあります。より明確な全体像を把握するためには、多様な場所の太陽光発電所から多くのデータを収集し、比較する必要があります。 

広報・取材に関するお問い合わせ
報道関係者専用問い合わせフォーム

シェア: