2016-05-17

生物多様性にみるゴム農園開拓の代償

 東南アジアで急速に拡大している天然ゴム栽培。その産地では森林伐採による生物多様性への深刻な影響が懸念されています。これを受け、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、中国雲南省のシーサンパンナ・タイ族自治州においてアリ相の変化を調査し、森林から天然ゴム農園への改変が無脊椎動物の多様性におよぼす影響について調べました。その結果、同研究チームはゴム農園におけるアリ類の多様性全体に急激な減少が見られることを発見し、その結果を科学誌 Ecological Monographs に発表しました。

 本研究チームを率いたOISTの生物多様性・複雑性研究ユニットのエヴァン・エコノモ 准教授は、「ゴム農園として開墾された森林に生息する、様々な生物が受ける影響の解明を目指していますが、すべての生物を調査することは現実的ではありません」と言い、「アリは他の無脊椎動物の指標となる生物で、生態系において非常に重要な役割を担っています。死体の分解や植物の種子散布に貢献していますし、どこででも数多く見られるためです。」と説明します。

 生物多様性への影響を調査するために、研究チームは同自治州のゴム農園11ヵ所、及び周辺の森林24ヵ所から186種のアリを採取しました。アリ類は種まで同定され、そこから、それぞれの機能形質を調査しました。ここでの機能形質とは、それぞれの種が生態系の中で果たす役割を反映していると考えられる特徴です。これには、体の大きさや、目の大きさ、足の長さなどが含まれます。また、同研究チームは採集されたアリ類の系統的多様性についても調査しました。これは採集されたアリ種が、それぞれ進化的にどういう関係にあるかを示しています。進化的に多様な種が含まれているほど、系統的多様性が豊かだということになります。

 「私たちは、森林がゴム農園へと開墾されることで生じる影響を、アリの種数から遺伝子まで、様々な次元の生物多様性を検証することで解明しようと考えました。」とエコノモ准教授は言います。

 その結果、ゴム農園におけるアリの生物多様性が、種の数だけではなく、機能的・系統的多様性においても著しく減少していることを発見しました。特に機能的多様性については、予想を上回る減少が見られました。

 さらに、研究データは、アリ類の多様性減少には一定の規則性があることを示しました。ゴム農園では、特定の機能形質を持った一部の森林種だけが巣を作り、生き延びられることがわかったのです。

 OIST博士課程の学生で、本論文の第一著者である、ツォン・リウさんは、「ゴム農園は、特定の性質を持った種だけを選別するフィルターのようです。」と言い、「これが、その地域のアリ類群集における、予想を上回る機能的多様性の喪失につながっていると考えられます。」と説明します。

 アリ類群集における、機能的多様性の低下を伴った種数の減少は、今後、他の昆虫や、ひいては生態系全体の機能にも影響を及ぼす可能性を示唆しています。

 「人類が地球環境に及ぼす影響を考えるうえでは、単純な種の数の増減だけではなく、様々な次元での生物多様性を考慮することが大切なのです。」とエコノモ准教授は締めくくりました。

(ホフランド レベッカ)

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