再生可能エネルギー発電予測をより正確に

風力発電の変動で再生可能エネルギー予測の誤差を知るOISTの研究成果が発表されました。

 石炭や石油などの従来のエネルギー源と違い、再生可能エネルギーは、エネルギー源そのものが自然の営みの変動に左右されるため、かなり予測がつきにくいものです。このことにより、その時々の消費需要をどのくらいまかなえるかを計算する際、再生可能エネルギーでは、多くの問題を抱えてしまうのです。

 沖縄科学技術大学院大学のマヘッシュ・バンディ准教授をリーダーとする研究チームは、このような再生可能エネルギーの変動の問題を掘り下げ、どのようにエネルギーの出力を予測するかを追及してきました。このたび本研究成果が、New Journal of Physics 誌に掲載されました。

 「送電網の安定した配電にとってさえ、電源の変動は厄介なものです。」とバンディ教授は述べています。「ですから、変動する消費需要に対し、変動する発電供給のバランスを合わせることは難しいのです。」

 バンディ准教授と論文共著者であるゴラン・ベル博士およびコルム・コノートン博士は、かつて米国ロスアラモス研究所で共に研究に従事していました。バンディ准教授いわく、知り合ってから3人とも、「ハイキングをしながら科学の問題をあれこれ考えるのが好きである」とわかったそうです。その後3人は、沖縄でハイキングをしながら再生エネルギーの変動の問題を真剣に考えることを決めました。

 本研究では、当時バンディ准教授のもとで大学院1年目の研究ローテーションをしていたOIST学生のマルト・トーツさんが、アイルランドにある複数の風力発電所の電力網を分析し、それらの発電所からの発電が同じようなパターンで変動することを突き止めました。これは従来の考え方とは異なるものでした。

 「今までは一般的に、地理的に分散した風力発電所はそれぞれ独立したものであると考えられてきました。つまり、発電時の変電量は、発電所ごとに異なると考えられていたのです。例えば、50kmも離れた場所にあれば変動は異なると思われてきました。」とバンディ博士は語ります。

 ところが、バンディ教授の研究チームが分析したデータの結果から、電力網の中にあるそれぞれの風力発電所は、その地域に吹く風の速さに呼応して独立して回転するのではなく、より広範な地理的天候システムの一環として、すべての発電所が長くて一日にもわたる期間において類似もしくは相関した発電をしていることが明らかになりました。

 「もしも発電所と発電所を接続するすべがあれば、ふたつの発電所が類似した型の変動をするのが観察できるでしょう。このことはふたつの発電所の発電量が瞬間ごとにきっちりシンクロすると言う意味ではなく、平均的に言えば、互いに非常に似た変動をするということを意味します。平均的に、ということが大事です。われわれが意味する相関関係とは、そういうことなのです。」とバンディ准教授は付け加えます。

 広範な地理的天候システムと同様、風力発電供給の予測し難さは、発電量の予測に誤差を生み出します。そこでバンディ准教授と彼の研究チームでは、風力発電網のデータにおけるある傾向を見いだし、その傾向における変動を分析するため、統計分析の手法により、予測上の二つのタイプの誤差を定量化しました。

 統計モデルにおいて、「時間スケール誤差」とは予測値と予測値の合間において予測がなされていないことを指し、この時その予測間隔においては、不確かさが生まれます。もうひとつの「スケーリング誤差」とは、異なる風力発電所における発電変動の相関関係において、現在の予測モデルでは予測不可能な度合いをいいます。バンディ准教授によれば「スケーリング誤差」は、一般に誤差を見積もるとき、離れた発電所の発電量の相関関係はそもそも考えないため、あまり考慮されないということです。

 風力発電に必要な需要と供給のより正確な予測をするうえで、この研究チームによる統計分析は、重要な位置づけとなる可能性があり、この方法は、他の代替エネルギー研究にも応用できるかもしれません。

 「この技術は、風力発電に限ったことではないのです。」とバンディ准教授は強調した上で、「予測できるくらいの十分なデータ蓄積による統計的構造があれば、この技術は時間と連動して変動をする他のタイプの再生可能エネルギーにも使えるでしょう。」と述べました。