OISTサイエンスチャレンジ2015

3月9~13日にかけて、「OISTサイエンスチャレンジ」と題するワークショップが開催され、国内外から22名の学部生および大学院生が参加しました。

   3月9~13日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)研究科オフィス主催の「OISTサイエンスチャレンジ」と題するワークショップが、同大学のキャンパスで初めて開かれました。本ワークショップには、国内外から多数の応募があり、最終候補者として選出された22名の学部生および大学院生が参加し、ほぼ1週間かけて実際の大学院生活を体験し、ネットワーク作りにも勤しみました。イベント最終日には、「サイエンスが導く私の未来とは?」をテーマに、参加者の学生がそれぞれ発表をおこないました。

   OISTに赴いた最終候補者の多くが、博士課程に進もうか、あるいは産業界で就職しようかどうか決めかねている様子でした。そのような学生に対して、自分にふさわしい博士課程の選択について、ワークショップを通して現役の学生から助言がありました。

 「博士課程は5年間の服役期間とは違います」と述べたのは、研究科長のジェフ・ウィッケンス博士です。ウィッケンス博士は、「OISTでは、バランスのとれた学生生活を送るよう奨励しています」と語ったうえで、OISTで育まれている学問の精神について、1週間でどれだけの時間を勉学に費やしたか、または、論文をいくつ発表したかということだけが学生の本分ではなく、新たな知の創造に貢献しているかどうかが最も重要視されると強調しました。

   1週間の滞在期間中、学生たちはOIST研究員による講演を聴講し、電子顕微鏡から超電導まで、それぞれが関心を持つ分野で実験に参加しました。

   また、本イベントでは、研究以外にもさまざまな活動をおこなう科学者とはどういうものかを体験してもらう機会が提供されました。OISTの英語講師を務めるトーマス・ホーランド氏は、学生の最終発表に向けて、各発表者のプレゼンテーションスキルを磨く手助けや、個別のセッションに分かれて面接試験にともなう手ごわい質問への対処法などを紹介しました。また、OIST生物システムユニットスタッフサイエンティストのラリサ・キセレバ博士からは、現在取り組んでいる微生物燃料電池の研究にたどり着くまでにどのようなキャリアの道をたどってきたのか、さらには、科学者の仕事と母親業の両立についても語ってくれました。広報担当副学長代理を務める森田洋平氏は、高エネルギー物理学からサイエンスについて広報する立場へと移行した自身のキャリア転換について語り、ワークショップの参加者に対して積極的に科学を発信していくこと、また、そのためには、多くの機会を提供してくれるウェブという既存のプラットフォームをぜひ活用してほしいと呼び掛けました。

   最終日のプレゼン発表では、実に幅広いテーマが網羅されていました。喫煙所の受動喫煙を防止するエア・カーテンといった革新的な応用から、ニュートリノビームを使った星間コミュニケーションといった大胆な発想も共有されました。

   また、持続可能な科学については、学生のあいだで繰り返し議論されました。例えば、大量の廃棄物となるホタテガイの貝殻の再利用や、有害な化学副産物の発生を回避するために自然界の細菌による化学反応を利用するなど、自然に寄り添った研究テーマも含まれていました。

   審査員のひとりを務めたOISTのケン・ピーチ教員担当学監は「プレゼンテーションのレベルの高さに驚きました」と述べ、「現役の科学者でさえ、このような短い時間でこれほど上手く伝えられる人は少ないでしょう。とりわけ心を動かされたのは、科学に対する皆さんの情熱です。自分の言葉に確信をもっているか。アドレナリンが身体中を駆け巡るような感覚を覚えたか。これが審査の決め手になりました」と、当日を振り返りました。

   見事優勝をおさめたのは早稲田大学1年生で生命科学を専攻している古賀夢乃さんです。将来の目標は、自然進化の仕組みを理解し、それに基づいて遺伝子工学の手法を変えていくことだと言います。また、アイジェム(iGEM)と呼ばれる合成生物学の分野で学生がアイディアを競う国際大会への出場経験も、古賀さんを優勝へと導いた要因となりました。

   ワークショップ開催中、参加者はOISTメンバーとも親交を深め、学術的な意見交換も行いました。また、個々の関心に沿った研究室で有意義な時間を過ごす機会もありました。

「博士課程に進むべきかどうか足踏みしていました。とくに、英語で教育を行う海外の大学でやっていけるかどうか自信がありませんでした。でも、OISTは世界中から人が集まっているので、博士課程の応募先として検討に値する場所だと思いました。」と語ってくれたのは、最終候補者のひとり、石坂直也さんです。石坂さんは、名古屋大学の修士課程1年目で化学を専攻しています。

   2015年のサイエンスチャレンジは、日本、アメリカ、ポーランド、インドネシアからの参加者が一堂に会した異文化体験だったと言えるでしょう。OISTは2016年の開催も視野に入れています。

「OISTサイエンスチャレンジが世界中の学生に向けた国際イベントへと発展していくことを期待しています」と、本イベントを主催した研究科オフィスの許田聖香さんは語りました。

 (ジョイクリット・ミトゥラ) 

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