2014-04-07

新たな発見が「長持ちする太陽電池」の開発に寄与

 OISTエネルギー材料と表面科学ユニットは、太陽電池の長寿命化の実現に寄与することが期待される、太陽電池の劣化現象に関する驚くべき発見をしました。太陽電池によって、化石燃料などの従来型のエネルギー源を代えていくには、コスト効率の高い新たな太陽電池を製造する必要があります。ここでコスト効率に関しては、太陽電池の製造コスト、光を電気に変える効率、および製品寿命の3点が鍵となります。太陽電池の経年劣化の原因について調べたヤビン・チー准教授とユニットのメンバーによって、何が経年劣化を引き起こし、製品寿命を短くしているかが明らかになったことで、様々な形態の太陽電池の技術が進歩する可能性があります。本研究は、The Journal of Physical Chemistry Letters に掲載されました。

 固体の色素増感太陽電池は、その製造コストが低く、高い効率で光を電気に変換しうることがこれまでにわかっています。ただ、電池の寿命を短くしている経年劣化の現象については、まだよく知られていません。経年劣化の原因を調査するために、チー准教授らは、太陽電池で広く使用されているspiro-MeOTADという材料に注目してきました。太陽電池の光電変換層の最上層の正孔輸送層に使用されるこの材料は、外部環境と接触しており、大気との接触、連続日射、高温、および埃やごみなどの多くの原因により経年劣化の影響を受けやすいと言われています。

 これまで劣化の最大の原因は、光酸化と考えられていました。つまり大気の気体分子と日光の両方に晒されることで化学変化が引き起こされると考えられていました。チー准教授らが、実際に光酸化が起きているかどうかを調べたところ、驚くべきことに、数日間、大気中のガスと日光に晒された後でも、検出可能な光酸化、つまりspiro-MeOTADの化学的劣化がないことが明らかになりました。次に研究チームは、大気だけに晒した時に光酸化を引き起こす原因となる他の有力な経年劣化のメカニズムについても調べました。spiro-MeOTADはアモルファス(結晶構造をもたない無定形物質)でありながら正孔輸送層として優れた性質を示すことから、安価な製造が可能となり、この種の固体の色素増感太陽電池に注目が集まる理由になっています。しかし、アモルファスであるがゆえに、空気の分子がいとも簡単にspiro-MeOTADに取り込まれたり、通り抜けたりという問題があります。やがて、こうした空気分子が太陽電池の不純物となり、経年劣化をもたらすのです。チー准教授らは、詳細な分析の末、異物の空気分子がspiro-MeOTAD層の経年劣化を引き起こし、長期にわたって太陽電池の効率の低下、つまり劣化を確実に引き起こしていると断定しました。

 本研究の次の段階として、spiro-MeOTAD層をカプセル化することで大気に晒されることから保護し、空気の分子が取り込まれることや、その後の経年劣化を防ぐための材料を見つけることが挙げられます。チー准教授は「低コストでspiro-MeOTAD層をカプセル化することができれば、低コスト・高効率・長寿命化の三拍子そろった太陽電池を製造することが初めて可能になるかも知れません」と、語っています。これらの太陽電池は、製造が簡単で費用対効果が高いため、理想的な太陽電池開発に向けて、一歩近づくことになります。

 チー准教授は「この技術は、我々が現在同時進行で取り組んでいるフレキシブルで透明な電極のコーティング技術と互換性があります。つまり、広い面積を有する透明でフレキシブルな太陽電池の製造にこの研究を利用することができるのです」と、説明しています。研究チームは、代替エネルギーの普及に向けてほんの僅かですが世界を動かしています。近い将来本研究がよりクリーンで効率的なエネルギーの生産分野において結実する日が訪れるかも知れません。

 本研究は、プリンストン大学のAntoine Kahn教授率いる研究グループと共同で実施しました。本研究のために、DSSC、Advanced Technologies R&D、日本メルク社よりspiro- MeOTADをご提供いただきました。

(エステス キャスリーン)

(エステス・キャスリーン)

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