2014-01-09

分裂酵母の生きるすべ

 細胞はどのようにして成長と分裂を繰り返したり止めたりするのでしょうか?この生物に関する根本的な疑問に答えようと、G0細胞ユニットの佐二木健一研究員らは、栄養源の枯渇を感知して細胞が分裂を止めるまでに、細胞の中でどのような反応が起きているのかを分裂酵母を使って調べています。その結果、栄養となる窒素源を断ってから1時間の間に代謝物に大きな変化が表れることがわかりました。この成果は2013年12月13日にオープンアクセスの学術誌 Matobolites に掲載されました。

 分裂酵母は真核生物の中で最も単純な生物として、進化の過程でヒトまで保存されている細胞の性質を調べる研究に適しています。分裂酵母は環境中の糖、ビタミン、ミネラル等を栄養にして生きていますが、中でも窒素源が枯渇すると、その後ほとんど成長しないまま約8時間の間に2回分裂をして、半分の大きさになった後、完全に成長と分裂を止めます。しかし、窒素源枯渇直後の1時間は見た目には変化がなく、細胞の中でどのような反応が起きているのかよくわかっていませんでした。

 そこで、佐二木研究員らは、窒素の供給を断ってから、15分後、30分後、1時間後に細胞の中の代謝物がどう変化するかを調べました。代謝物とは、細胞が生きるために栄養から作り出す物質のことで、これを解析することで細胞内の活動を知ることができます。今回、質量分析装置で代謝物を計測し、検出された数千種のピークの内、3回行った実験の中で確実に同定できた75個の代謝物について調べたところ、15分後には代謝物に劇的な変化が起きていることが分かりました。まだこの時点では見た目に何も変化がないにも関わらず、いくつかの代謝物の量が急増している一方で、あるグループに属する代謝物が一斉に減少していました。これらの結果から、環境中の栄養源の変化は細胞内の代謝物に素早く反映されていることがわかりました。また、窒素という一つの栄養素の変化が、糖(グルコース)の代謝経路を変えていることが示唆されました。

 佐二木研究員は、「細胞内の複雑な反応の中でどの部分が窒素源枯渇に直結しているのかを見極めるのが難しかった」と言います。今回、窒素源枯渇直後の細胞の全体像が見えたことで、これらの初期反応が8時間後の細胞分裂停止へどうつながっていくのかを今後調べていきたいとしています。また、今回現れた反応は、環境変化に対応できずに分裂し続ける原因となる遺伝子を見つけるための指標としても使うことができます。さらに理解が深まれば、細胞分裂が止まらなくなるがんなどの治療方法を導く鍵になることが期待されます。

(柴田 幸子)

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