G0細胞ユニットによる低グルコース環境における分裂酵母の研究~代謝・細胞老化研究の新境地へ~

OISTのG0細胞ユニットの研究者らは、分裂酵母細胞とヒト細胞において実際に必要とするグルコース濃度は驚くほど似ていること、また、グルコース飢餓によって分裂酵母の寿命が延びることを発見した。

  グルコースは細胞のエネルギー産生に不可欠であり、ヒトの体細胞は血液からグルコースを取り込むことによってエネルギーを作り出している。ヒトが健康でいるためには血液中のグルコース濃度は4-6 mmol/Lに維持されなければならない。これが維持できず、血液中のグルコース濃度が上昇するのが糖尿病である。細胞周期研究でよく用いられるモデル生物、分裂酵母を培養する培地は通常100 mmol/L以上のグルコースを含んでおり、ヒトの代謝研究のモデルとするには高すぎる値である。しかしこの映像が示すように、分裂酵母は血液中と同程度のグルコースを含む培地においてもきちんと成長し、細胞分裂を行い増殖する。これはヒトの細胞老化や糖尿病研究のモデルとしての分裂酵母の可能性を示している。

  沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)、G0細胞ユニットの研究者らは、低グルコース環境における分裂酵母の成長、増殖、代謝についての最初の研究論文を発表した(Pluskal et al., FEBS J 2011)。分裂酵母細胞とヒト細胞において実際に必要とするグルコース濃度は驚くほど似ていること、また、グルコース飢餓によって分裂酵母の寿命が延びることを発見した。この論文はFaculty of 1000により選出され、評価されている。「Faculty of 1000 (F1000)」とは、生物学と医学研究の出版物において、最も重要だと思われる論文を認定し評価を与える学術組織である。

ビデオを見る)分裂酵母はヒトの血液と同程度のグルコース(4.4 mmol/L)を含む培地でもきちんと成長し、増殖する。OIST G0細胞ユニット(代表研究者:柳田充弘博士) グループリーダー 林 武志博士よる映像と本文の和訳。

(文:クーパー・マイケル、訳:林 武志博士)

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