太陽エネルギーをもっと賢く利用しよう

  化石燃料には限りが有り、いつかは枯渇するため、深刻化するエネルギー問題に直面する各国は太陽光をはじめとする代替エネルギーの活用を迫られています。OISTのエネルギー材料と表面科学ユニットを率いるアシスタント・プロフェッサーのヤビン・チー博士は、低い生産コストでしかも非常に効率的なハイブリッド太陽電池(ソーラーセル)の開発に取り組んでいます。

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  「ハイブリッド・カー、ハイブリッド植物、ハイブリッド動物という言葉はよく耳にしますが、ハイブリッド・ソーラーという言葉を聞いたことはありますか?」と、熱く語りかけるのはヤビン・チー博士です。現在の太陽光発電(ソーラーパネル・セル)は、無機材料の多結晶シリコンで作られていますが、コストが高く、それに生産に時間がかかります。チー博士が研究しているハイブリッド・ソーラーセルは、有機材料と無機材料を組み合わせて作られます。

  チー博士は、「環境に優しくというのは、単に再生可能エネルギーを使うだけではなく、天然資源をもっと賢く利用する方法を見つけようということでもあります。ソーラーセルに有機材料を用いる利点は、材料が手に入りやすく、ソーラーセルを作るための高価な装置が要らない、つまりずっと安価に生産できるということにあります。無機材料と有機材料の長所を組み合わせることで、安く、効率的なソーラーセルを作る将来有望な方法となるのです。」と強調しています。

  ソーラーパネルは、通常4層構造となっています。1層目は太陽光をソーラーパネルに取り込むための透明な表面電極、2層目と3層目は電子輸送物質とホール輸送物質で、太陽光の入射光子によってエキシトンが生成されます。生成されたエキシトンは、電子輸送物質とホール輸送物質の界面に移動し、そこで電子とホールが分離します。分離した電子とホールは、それぞれ電子輸送物質とホール輸送物質中に移動します。そして、これらが表面電極とボトム電極によって集められ、電球などの外部回路に電気が流れるという仕組みです。

  チー博士の研究には、有機材料と無機材料の両方からなるソーラーセル構成材料の構造と、物性の関係を解き明かしたり、新しい材料やナノテクノロジーなどの技術を低コスト、高効率の太陽エネルギー集積装置の開発に活かしたり、といったことが含まれます。チー博士は、他大学の研究者との共同研究を通じて、研究ネットワークを拡大したいと考えており、そのネットワークはすでに、国内では大阪大学や広島大学、海外では中国の北京大学、米国のプリンストン大学やカリフォルニア州立大学バークレー校、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンへと広がっています。

  日本、そして世界が代替エネルギー資源への移行を模索している今、チー博士の研究は絶好のタイミングを迎えたと言えるでしょう。世界の主要エネルギー資源は、石油35%、石炭28%、ガス23%に代表される再生できない化石燃料です。再生可能エネルギー資源、特に太陽エネルギーが占める割合はわずか0.04%にすぎません(国際エネルギー機関、2006年)。

  日本政府は、現在、個人家庭向けに、太陽エネルギーを利用するパネルの設置を奨励し、余ったエネルギーは、複数の家庭で共有する中央送電系システム(セントラル・グリッド)に集めようと計画しています。チー博士が開発しているような効率的なソーラーセルが完成すれば、各家庭でそれぞれグリッドに蓄電し、電気を自給できるようになる日が来るのです。

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研究で使用する原子間力顕微鏡について説明するチー博士

(ジュリエット・ムセウ)

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