米国に渡った琉球王国の文物を巡るミステリー

4月2日にOISTで第2回目のコロキアム「米国に渡った琉球王国の文物を巡るミステリー」が開催されました。講師には、沖縄美術史の専門家である高安藤さんをお招きしました。


高安 藤さん


米国連邦捜査局の盗難美術品リストに登録されている琉球王朝の尚家の王冠


講演前に高安さんを囲んで、歓談を楽しむ参加者たち

 4月2日にOISTで第2回目のコロキアム「米国に渡った琉球王国の文物を巡るミステリー」が開催されました。講師には、沖縄美術史の専門家で、元在沖米国総領事館広報・文化担当補佐官の高安藤さんをお招きしました。高安さんは米国の美術館で収蔵されている多数の琉球王国の美術工芸品や文書がどのような経緯でそこに収蔵されるに至ったかに興味を持ち、今から10年前、59歳で琉球大学大学院に入学し、修士号を取得されました。

 高安さんによると、沖縄の美術工芸品や文書の多くが1945年の沖縄戦の戦中・戦後に失われたため、沖縄の人達の多くは、米国の美術館で収蔵されている琉球王国の文物は米兵が戦利品として持ち帰ったものだと思っていました。しかし、高安さんが米国の主要な博物館・美術館(アメリカ自然史博物館など)37施設に収蔵の1984点にのぼる琉球王国の文物を調査した結果、戦利品として持ち帰られたものはわずか10点ほどであることが判明した一方、200点ほどはその由来、つまり、それらの文物がいつごろ、誰によって、どうして米国に移動したかは不明で、それ以外の文物については、合法的に入手されたものだということが明らかになったということです。また、個人の収集家や複数の収集家たちによるネットワークによって、1880年代以降に日本政府の承認のもと、文物の収集が行われたそうです。このような収集活動は、彼らの日本や沖縄の文物に対する純粋な興味や文化保存に対する意識のもとに行われていた、と高安さんは説明しました。

 しかし、すべての謎が解けたわけではありません。戦中・戦後に米兵が沖縄の「記念」に持ち帰った多くの文物の行方が分かっておらず、こうした文物は美術館などに収蔵されずに、個人が保管したままになっていると考えられています。高安さんは、琉球王国の文物の所在を明かすミステリーを解くために、海外でそうした文物を発見した場合には、高安さんご本人又は沖縄県に連絡をして欲しいと講演参加者に協力を呼びかけました。
OISTコロキアムは、一般向けの講演シリーズです。講演は英語又は日本語で行われ、必要に応じ同時通訳が提供されます。

(ショーナ・ウィリアムズ)

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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