海洋個体群の幼生分散とコネクティビティ

Coral

海洋生態系の個体群のコネクティビティを定量化することは、海洋生態系のグローバルかつ長期的な変化を理解する上で重要です。本プロジェクトの主な目的は、第一に、幼生がどのくらいの距離を移動し、新しい場所に定着するまでにどのくらいの時間を要するのかを知るために、個体群の分散メカニズムを研究すること、第二に、厳選された個体群の生物地理学的特徴を決定づける加入および集団遺伝学的データを用いてこれらの分散予測を検証することです。分散プロセスを理解することで、最適な海洋保護区を設計することが可能となり、それによって沖縄の脆弱な生態系の崩壊や、ひいては世界的な希少種の絶滅を防ぐ海洋保護計画に貢献できると期待しています」と述べています。

larval dispersal
海洋生態物理学ユニットでは、深海における幼生の分散プロセスを調査している。図はMitarai et al.2016より。
海洋生態物理学ユニットでは、深海における幼生の分散プロセスを調査している。図はMitarai et al.2016より。

海洋資源(SDG14)は、海流を通じて基本的に相互にコネクティビティ(結びつき)を持っています。このコネクティビティは、海洋生態物理学ユニットの基本的な研究テーマの一つであり、人間が営む産業や気候変動(SDG13)が及ぼす有害な影響から海洋環境を保全し、種を保護する上で重要なプロセスです。コネクティビティは、海洋生態物理学ユニットの研究テーマであり、琉球列島の沿岸地域および国の管轄外の外洋地域におけるコネクティビティと保全に焦点を当てています。研究の主な対象となる環境は、サンゴ礁、マングローブの生息地、熱水噴出孔です。これらの環境の生態系はすべて、現在、産業開発によって脅かされており、その関連性を理解することで、持続可能な消費と生産(SDG12)につなげることができます。さらに、海洋におけるコネクティビティの維持に用いる海洋科学的プロセスは、気候によって変化する可能性があります。コネクティビティが過去にどのように変化し、予測される気候条件下でどのように変化するかを理解することで、「海洋資源」が将来直面する可能性がある脅威に備えることができます。

海上保安本部との業務協力協定を締結

海洋生態物理学ユニットは、開発した研究ツールの応用として、2012年3月から第11管区海上保安本部と協力協定を結び、沖縄近海における i)漂流予測精度の向上、ii)海洋潮汐モデルおよび海洋流シミュレーションの高度化に貢献しています。

Regional Coast Guard Headquarters
2020年に第11管区海上保安本部の協力を得て慶良間列島の潮琉シミュレーションを開発した。
2020年に第11管区海上保安本部の協力を得て慶良間列島の潮琉シミュレーションを開発した。

海洋プラスチックの分散

海洋生態物理学ユニットは、OISTのECO(Environmentally Conscious OISTers)クラブと協力して、海洋ゴミが世界中の海を漂流する様子を披露し、海洋の循環からゴミを取り除くビーチクリーンを行いました。

Mitarai unit outreach activities
海洋生態物理学ユニットの学生が恩納小学校で海洋ゴミ分散の授業を行い、近くのビーチでビーチクリーンを行った。
海洋生態物理学ユニットの学生が恩納小学校で海洋ゴミ分散の授業を行い、近くのビーチでビーチクリーンを行った。

プロジェクトリーダー

海洋生態物理学ユニット 御手洗哲司准教授

プロジェクト協力団体・個人

幼生分散

  • 武田尚弥 (神戸学院大学) 鹿島基彦 (神戸学院大学) 内山雄介(神戸学院大学)
  • 小谷瑳千花(神戸大学 )
  • 上平雄基(日本原子力研究開発機構)
  • Stephen G. Monismith(スタンフォード大学)
  • 渡部裕美(国立研究開発法人海洋研究開発機構)Alexander F. Shchepetkin(カリフォルニア大学ロサンジェルス校 )James C. McWilliams(カリフォルニア大学ロサンジェルス校)佐々木猛智 (東京大学)

国立研究開発法人海洋研究開発機構藤倉克則 加入調査

  • 国立研究開発法人海洋研究開発機構渡部裕美佐々木猛智(東京大学)
  • 国立研究開発法人海洋研究開発機構山本啓之 上田延朗(OIST)
  • 中村 雅子.(東海大学)
  • 熊谷直喜 (琉球大学)
  • 酒井 一彦(琉球大学)岡地賢 (有限会社コーラルクエスト)
  • 小笠原敬(一般財団法人沖縄県環境科学センター)
  • 比嘉義視 (恩納村漁業協同組合)
  • 山川英治(一般財団法人沖縄県環境科学センター)

集団遺伝学

  • Makamas Sutthacheep ( ラムカムヘン大学)
  • Zoe Richards (西オーストラリア州立博物館))
  • Put Ang (香港中文大学)
  • Mareike Sudek (National Marine Sanctuary of American Samoa)
  • 藤村篤(グアム大学)
  • Robert J. Toonen (ハワイ大学) アレキサンダー・ミケェエブ(OIST)
  • エヴァン・エコノモ(OIST)
  • 佐藤矩行(OIST)
  • 井口亮(独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校) 長田智史(一般財団法人沖縄県環境科学センター )上野大輔(鹿児島大学)
  • 酒井 一彦(琉球大学)

国立研究開発法人海洋研究開発機構渡部裕美 国立研究開発法人海洋研究開発機構 稲垣史生

プロジェクト関連出版物

  • N. Takeda, M. Kashima, S. Odani, Y. Uchiyama, Y. Kamidaira, S. Mitarai, Identification of coral spawn source areas around Sekisei Lagoon for recovery and poleward habitat migration by using a particle-tracking model. Sci. Rep. 11, 6963 (2021).
  • L. A. Levin, C.-L. Wei, D. C. Dunn, D. J. Amon, O. S. Ashford, W. W. L. Cheung, A. Colaço, C. Dominguez-Carrió, E. G. Escobar, H. R. Harden-Davies, J. C. Drazen, K. Ismail, D. O. B. Jones, D. E. Johnson, J. T. Le, F. Lejzerowicz, S. Mitarai, T. Morato, S. Mulsow, P. V. R. Snelgrove, A. K. Sweetman, M. Yasuhara, Climate change considerations are fundamental to management of deep-sea resource extraction. Glob. Chang. Biol. (2020), doi:10.1111/gcb.15223.
  • P. H. Wepfer, Y. Nakajima, M. Sutthacheep, V. Z. Radice, Z. Richards, P. Ang, T. Terraneo, M. Sudek, A. Fujimura, R. J. Toonen, A. S. Mikheyev, E. P. Economo, S. Mitarai, Evolutionary biogeography of the reef-building coral genus Galaxea across the Indo-Pacific ocean. Mol. Phylogenet. Evol. 151, 106905 (2020).

関連リンク

OISTニュースセンター: 幼生分散の定量化で「海底温泉」の生態系を救え!

御手洗哲司博士らがキヤノン財団の研究助成金を取得

Hakai Magazine誌: https://www.hakaimagazine.com/news/epic-migration-along-bottom-sea/

OIST Facebook: https://www.facebook.com/oistedu/posts/were-very-proud-of-the-marine-biophysics-unit-led-by-prof-satoshi-mitarai-who-ye/3689289654435960/

OIST ニュースセンター: 第11管区海上保安本部と業務協力協定を締結

Take Action:

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