2011-05-30

OISTで新たな気象レーダーの試験を実施中

Workers wait for the crane.
観測地点を準備する設置作業の担当者

  沖縄に引っ越すと、周囲の皆から「天気予報は信用しないほうがいいですよ。」と言われたりします。島の天気は変わりやすくて、干したばかりの洗濯物がびしょ濡れになることは珍しくありません。ところが、来月、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (JAXA)と独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が、OIST恩納キャンパスの数か所で、天気予報と洪水予想の強化につながる実験を行うことになりました。

  JAXAとNASAは、草分け的存在の熱帯降雨観測衛星「TRMM」の後継となる全球降水観測衛星「GPM」の開発を共同で進めています。TRMMは、赤道を中心とした限られた領域の降雨について3D画像を作成するものでした。新しいGPMは、TRMMよりも広範で詳細なデータを観測することができます。これにより、霧雨や氷雪を含め、地球上のあらゆる降水について、より正確で最新の画像が得られると期待されています。

  この衛星には数多くの最新技術が搭載されています。そのうちのひとつが、JAXAとNICTが開発を主導しているKa帯レーダ(KaPR)です。この「Ka」はレーダの周波数の「Ka帯」(約35GHz)を意味しています。この帯域幅が気象衛星に利用されるのは、このプロジェクトが初めてです。そのため、衛星から得られたデータを処理するアルゴリズムを調節できるように、KaPRの精度と範囲を検証しておく必要があります。

  KaPRは、従来の気象レーダと同様、レーダ波を発射し、雨などの降水の粒子にぶつかって跳ねかえってきたレーダ波を測定することで、スキャンした領域にある降水の規模や量を明らかにするという仕組みになっています。KaPRは他のレーダよりはるかに詳細な観測が可能で、霧雨など、極めて小さな水滴も検知することができます。しかし、この高い感度と引き換えに難点となるのが、降水の中を通り抜けるときにレーダの電波が弱まりやすいという性質です。

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研究棟1の屋上に設置されたKaPR実験ユニットから直接見た、NICT沖縄電磁波技術センターとOISTのシーサイドハウス。これら3か所に設置された観測機器は、今後6週間にわたって恩納村のこの地域の降雨を観測します。

  そこで、この新しいレーダのメリットを最大限引き出すために、数々の地上検証が行われています。KaPRの弱点を把握し、衛星のデータ処理アルゴリズムを最適化する試みです。JAXA宇宙利用ミッション本部地球観測研究センター(EORC)主任研究員の清水収司博士は、今回の検証の目的について、「Kaバンドは、雨の中で減衰していきます。どんなふうにどのぐらい弱くなるのか、どのような雨の粒によって弱くなるのかを知りたいので、この新型レーダーが衛星に搭載される前、まだ地上にあるうちに、測っておきたいのです。」と述べています。

  KaPRの性能データを収集するため、JAXA-NICTチームは2台のKaPR検証用ユニットを用意し、1台をOISTの研究棟1の屋上、もう1台をNICT沖縄電磁波技術センターの屋根に設置しました。この2台のKaPR検証用ユニットは、OISTシーサイドハウス上空の降雨を観測できるように設定されています。さらに、シーサイドハウスには第3の別の装置が設置されており、先端ビデオシステムを使って上空の降雨を直接観測します。この3台の装置が上空の同じ範囲の降雨を観測し、降雨データをJAXAとNICTに転送します。このデータを開発者たちが分析し、技術の向上を図るというわけです。

  GPMプロジェクトは、天気予報の信頼性を向上させることは間違いありませんが、傘を持っていくべきかどうかを知ること以上に大きな意義を持っています。降雨データの地理的範囲が広がり精度が高まれば、究極的には、水資源管理、河川治水、灌漑システム、洪水の規模や位置を正確に予測する方法の改善など、実用的なメリットにつながるのです。気象全般や、特に地球温暖化のような問題を理解するには、全気象系の正確なデータが必要となります。GPMはこのデータを手に入れるための重要な一歩となります。OISTは、このような意欲的かつ極めて重要な探究の一助となることを光栄に感じます。

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Ka帯降雨レーダ実験ユニットが研究棟1の屋上に設置される様子
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清水博士(右)とOISTキャンパス建設課日高靖晃課長(左)が、研究棟1の屋上にKaPR実験ユニットを設置する作業を見守る。
 

(文:クーパー・マイケル)

 

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