第5回ジャパン・サイコム・フォーラム(JSF)がOISTで開催
かつての琉球王国は、東アジア有数の交易国家であり、人や思想が行き交う合流地点として繁栄し、日本、中国、タイ、フィリピンなど、さまざまな国々と交易を通して、物資の移動、アイデアの交換がされました。このような歴史的背景のある沖縄に立地するOISTで、第5回ジャパン・サイコム・フォーラムが開催されたことは意義深く、歴史的な瞬間でした。日本、東南アジアのみならず、遠くは欧州やアフリカからも多数の参加者、講演者、主催者が集まりました。
新型コロナの影響で過去2回のフォーラムはオンライン開催でした。日本国内では英語話者の科学コミュニケーターは多くなく、普段は離れて活動しいているいうこともあり、多くの参加者にとって待ち望んでいた対面での開催となりました。イベントでは積極的な議論が交わされましたが、特にコーヒーブレイクとネットワーキング・ディナーでは、コーヒーやクッキー、カナッペを楽しみながら、名刺を交換したり、経験談を話し合うなど、活発な交流が行われました。
今回、対面開催されたフォーラムの目玉の一つは、ネットワーキングでした。あらゆる専門業種から参加者が集まり、所属機関やメディアの形態などの違いを超えて親睦を深めました。基調講演には、英国フランシス・クリック研究所のアリ・ベイリー広報部長が登壇しました。生物学を専攻した後、英BBCのラジオ番組制作、英国の病院のコミュニケーション・ディレクターを経て現職に至るまでの貴重な経験談をお話しいただきました。OISTのヘザー・ヤング副学長(広報担当)が司会を務めたパネルディスカッションでも、科学コミュニケーターの多面的な世界について同様のテーマで議論し、日本、ナイジェリア、フィリピンから集まった多様なパネリストが、STEM(科学・技術・工学・数学 分野の教育)と広報、アフリカでの医薬分野のビジネス、世界的な気候変動問題の取り組みと地域医療まで、それぞれの個人的・職業的な成長について語りました。
今回のフォーラムでは、多くの実践スキルの実例も紹介されました。4つのワークショップでは、参加者がポッドキャスティングやアニメーションといったさまざまなツールを駆使し、科学をグローバルからローカルへ、日本語から英語へ、あるいはその逆へと置き換える際に必要な文化的意識も学びました。6つのフラッシュトークでは、包括的データ分析を通して特定のコミュニティのニーズの評価、STEM脱出ゲームの紹介、クリエイティブ・ライティングの活用など、科学を伝え、一般の聴衆を惹きつけるための創造的なコミュニケーションを再考するための6つのヒントが紹介されました。
主催者、ボランティア、OISTが一丸となり開催された第5回ジャパン・サイコム・フォーラムは大盛況に終わりました。科学コミュニケーションの分野を向上させるという熱意と、日本中、そして世界中の科学コミュニケーターたちが集結し、オープンで温かく、生産的でカジュアルな場を作ろうという思いに溢れ、今後の科学の普及に明るい未来を感じさせるイベントでした。