2017-09-27

ヤーシャ・ネイマン准教授が挑む「紙一重の奇跡」

  ヤーシャ・ネイマン准教授のオフィスに立ち入るのなら、時間と空間の本質についての一時間ほどの熱烈な講義が始まること覚悟してください。31歳のこのエネルギッシュな物理学者は、難解で複雑な理論について、まるで天気の話でもするかのような気軽さで話しかけてきます。

  「つまるところ、電流も磁気も光も、結局同じものなのです」と、ネイマン准教授は愉快そうに話します。しかし、これはほんの序の口です。

  ネイマン准教授は、初めてオフィスを訪れた人に本棚にある「ファインマン物理学 第三巻」という分厚い本を見せます。ネイマン准教授によれば、物理学の知識を持たない人が学ぶにはこの三冊が必須の教科書だそうです。そして研鑽する意欲がない人は、物理学を理解する必要ないとさえ語ります。一般の人向けの解説をしやすい他の分野とは異なるこの分野にネイマン准教授を導いたのは、高度な数学に精通していることに加えて極めて知的な頭の体操が求められるというまさにその難解さです。ネイマン准教授の言葉を借りると、それは「人間の思考を、人間ではない超越したなにものかが考えるときのように訓練すること」であるからだそうです。

  ネイマン准教授が率いる沖縄科学技術大学院大学(OIST)の量子重力ユニットは実験を行わない研究チームです。他の多くの研究者とは異なり、高価な装置を必要とせず、実験室や複雑な機器もありません。思考のみを必要とします。

気難しい雰囲気を持つ物理学者とはほど遠いヤーシャ・ネイマン准教授

  ネイマン准教授が日々取り組んでいるのは、ある大きな疑問です。加速膨張を続けているこの宇宙で、量子力学と一般相対性理論はどのように統一的に機能しているのか。別の言葉で言い換えれば、宇宙の中の最小距離である10-35 メートル、「プランク長さ」と、最大距離である500億光年後、「宇宙の地平線」という極端に異なる長さがどのように共存できるのか。ネイマン准教授の研究は、理論と現実を一致させ、無限と有限の関係を探求します。「物事がうまくいくのは紙一重の世界で、奇跡のような数学の性質によって働く」という問題に取り組むことなのです。

  ネイマン准教授に研究チームの一番の目標を尋ねると、「楽しむこと」という答えが返ってきます。今のところ他のメンバーらも同意しているようです。

  「物理学者というものはたいてい、何となく気難しい顔をしているものです」と、ネイマン准教授のもとで博士研究員として働くリンギン・チェンは言います。「でも、ネイマン准教授が語る物理学は、まるでファンタジーの世界のようです」

  「ファインマン物理学(1966年)」を書き綴ったリチャード・ファインマンはかつて「問題の核心に対し、様々な視点から取り組む概念」の重要性について語りました。ネイマン准教授も自分とは異なる考えからアプローチし、追及し、そのアイデアについて頻繁に議論するよう研究チームメンバーを奨励します。彼らの研究とネイマン准教授の希望は、答えを導き出し、この宇宙の原動力を作り出すものは何かを理解するのに一歩近づくことです。

  ネイマン准教授は言います。「この問題がどんなに困難なものでも、必ず答えはあるはずです」。

(ポーラ・レム)

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