2015-02-17

電力の「地産地消」を目指す

  再生可能エネルギーの将来像には、オープンエネルギーシステム(OES)と呼ばれる汎用性の高いエネルギーの生産・分配システムの運用が見込まれています。

  OESは、大型発電所による集約型の発電や電力輸送とは異なり、風力や太陽光等の再生可能エネルギー源を用いて戸建て住宅や地域コミュニティ、町村といった小規模事業主による発電・分配を可能にします。消費者自らが生産者としてエネルギーを供給するマイクログリッド(小規模なエネルギーネットワーク)なら、大規模な発電所を必要とせずに僻地の村に電気を通わせることもできます。それだけでなく、OESは、エネルギーの生産・分配をローカル化することにより、再生可能エネルギーの供給安定化を図り、先進国の化石燃料依存からの脱却を後押しすると期待されています。

  このような開放型システムを実用化するまでの道のりはさほど遠くない、と沖縄科学技術大学院大学(OIST)の北野宏明教授は言います。

  「新境地へと足を踏み入れたことになります。」2月2、3日にOISTで開かれた第2回オープンエネルギーシステム国際シンポジウムで北野教授はこう切り出しました。「研究は継続していく一方で、実際の運用開始に向けた話し合いを始める時期に差しかかっています。」

  本シンポジウムには、100名をこえるエネルギー専門家やベンチャー投資家、政府関係者が世界中からOISTに足を運び、再生可能エネルギーやより汎用性の高い分散型エネルギーシステムの潜在的な可能性について話し合いました。

  OESの一例として、北野教授は、OISTの教員宿舎に設置された直流送電網システムを紹介しました。OISTとソニーコンピューターサイエンス研究所(ソニーCSL)が共同で設計した同システムは、ソーラーパネルと「エネルギーサーバー」と呼ばれる電力受給管理システムを接続したものです。このようなシステムを他の島しょ国に適用することを考えたとき、潮風と台風が発生する亜熱帯気候の沖縄は最適なモデルケースとなりえます。

  「日本国内でOISTほど、この研究に適した場所はありません。」ソニーCSLの代表を兼務する北野教授は言います。「沖縄でうまくいけば、他の地域でも適切な運用が見込めるでしょう。」

  OISTオープンエネルギーシステムでは、計19戸の住宅の屋根に取り付けられたソーラーパネルで発電し、各家庭にはエネルギーサーバーが配置されています。サーバー間で直接情報をやり取りするため、複数の家庭が電力を融通し合い、使用者の需要に応じて電力が自動的に分配されます。余剰電力は、ソニーのオリビン型リン酸鉄を用いたリチウムイオン電池(Phospho-olivines Lithium Ion battery)に貯蔵され、日射量の少ない日に使用することができます。また、管理者が発電量と消費量をリアルタイムで監視し、送電網を通って分配される電力供給の状況を把握することができます。このような送電システムにより、OISTの教員宿舎には2014年12月から途切れることなく安定した電力供給が続けられています。

  「90年代からずっと太陽エネルギーに関わってきましたが、直流を使ったシステムを目にするのはこれが初めてです。」と語るのは、カナダ・トロントを拠点とするベンチャー投資会社MaRSの代表、ジョン・ドグテロム氏です。「このシステムには目を見張るものがあります。」

  人口増加や気候変動といった問題に加え、求められるエネルギー供給源が刻一刻と変化するなかで、これまで以上に、再生可能エネルギーの普及とより効率的なエネルギー使用の重要性が高まっています。太陽光や水といった自然エネルギーを活用した発電方法から、スマートサーモスタット(自動温度調整装置)や、愛くるしいテディベアのキャラクターが登場して電力消費量の抑制を促す管理アプリまで、エネルギー使用の効率化を図る様々な技術開発や仕組み作りが進められています。

  「今まさに第2のエジソン時代を迎えています。」と、電球の実用化に初めて成功したことで知られるトーマス・エジソンを引き合いに出して語るのは、オーストラリアのモナシュ大学で情報技術(IT)を教えているエネルギー市場の専門家、アリエル・リーブマン教授です。

  リーブマン教授は、本シンポジウムに招かれる以前は、「オープンエネルギーシステム」という言葉を耳にしたことがなかったといいます。「このようなシステムに相応しい呼称が生まれたことを喜んでいます。なぜならスマートグリッドという言葉が、もはや新しい概念に追いつかなくなってきているからです。」

  今後、多種多様な技術を通じて、消費者自身がエネルギー生産管理により深く関わることになる、とシンポジウム参加者たちの多くが同様の見解を示しています。しかし、構想の実現を図るには、実用化の最適な時期を見極める必要があります。

  フィンランドの国際的なエネルギー・シンクタンクVaasaETTの最高経営責任者兼創設者であるフィリップ・ルイス氏は次のように語っています。「様々な成功要因が出揃い、あとは、それらを適時適所に導入していけば良いのです。」

  エネルギーシステムを再構築するにあたり、未知なる変化に対応できるよう柔軟性を備えることが重要だと、米イリノイ工科大学でデザイン学を教えているパトリック・ウィットニー教授は言います。「重要なのは、いま目に見えていないものをデザインすることです。その方法とは、解決策そのものではなく、それを編み出すプラットフォームを構築することです。」

(ローラ・ピーターセン )

  広報や取材に関しては、media@oist.jpにお問い合わせください。

(ローラ・ピーターセン)

広報や取材に関して:media@oist.jp