2011-08-01

沖縄トラフにおける海流輸送パターンを探る

 

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(左から)糸満港に停泊中の図南丸に乗船する
御手洗博士、中村研究員、ヴィンセント短期準研究員

  世界屈指の透明度を誇る沖縄の海には、日本国内にとどまらず海外からも多くのダイバーがやってきます。海の生き物を間近に見る体験は感動的で、より深い海の世界に人々をいざないます。

  海洋生態物理学ユニット若手代表研究者の御手洗哲司博士と同ユニット研究員の中村雅子博士は、熱水噴出孔と呼ばれる深海から熱水が噴出している場所に棲む生物について調べています。熱水噴出孔は地球内部から熱や鉱物を海底にくみ出し、豊かで独特な生態系を育む自然システムです。そこに棲む生物の多くは成長すると広くは移動しませんが、生まれて間もない時期(幼生期)は海流によって輸送されます。そのため、生物の分布範囲や遺伝的な分化の程度などは、この幼生の海流輸送に大きく影響されます。

  去る7月8日、御手洗博士と中村博士、現在、短期準研究員として御手洗博士の下で研究をしているフローラ・ヴィンセントさんが、沖縄県水産海洋研究センター(糸満市)の漁業調査船「図南丸」(となんまる)を訪れました。訪問の目的は、図南丸が東シナ海での沖合観測に出発する前に、ドイツ社製のNEMOフロートと呼ばれる海洋観測装置を船員の方々に託すためでした。

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  自動制御された電池式のこのフロートは、一度海に沈めると水深1000メートルまで降下します。その後2週間に一度の間隔でフロート内の風船にオイルが注入され、フロート全体の容積が変わることで浮上し、海面に顔を出します。そして、イリジウム衛星を介して、フロートの位置や水温、塩分などの情報を送ります。情報の配信が終わると、フロートはまた元の容積に戻り、再び深海に沈んでいきます。今回御手洗博士らが手配したフロートは、およそ5年間にわたって自動観測を行うことが可能で、こうして集められたデータは、熱水噴出孔が見られる海域の水平方向の海水の動きを把握するのに使われます。

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沖縄県水産海洋研究センターの平手康市主任研究員(後方)が見守る中、フロートについて説明するハイドロシステム開発(NEMOフロートの国内総代理店)の加藤正さん

 

  本研究プロジェクトは、御手洗博士らが海洋研究開発機構 (JAMSTEC) と共同で進めているもので、沖縄の東シナ海側の沖縄トラフと呼ばれる 熱水噴出域に生息する生物の幼生輸送メカニズムの解析を目指します。海流シミュレーションを組み合わせることで幼生の分散パターンをつきとめ、幼生が海流によってどのようなパターンで結ばれているのかを解明するとともに、沖縄トラフにおける海底開発時に欠かせない海洋環境予報システムを構築することを目的としています。

 

  中村研究員は、「様々な生物がどこにどれくらい生息するかが明らかになれば、海洋保護区の設定に役立ちます。また、生態系を破壊しないような天然ガスやレアメタルなどの深海資源採掘計画構築への貢献が期待されます。」と研究の意義を強調しています。

  御手洗博士は、「このエキサイティングな研究プロジェクトは始まったばかりですが、今後数年にわたり多数のフロートを沖縄トラフに投入し、沖縄トラフにおける深海底熱水噴出域の幼生輸送と生物群集変動の詳細を明らかにするつもりです。」と意気込みを話していました。

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沖縄の東シナ海側でフロートが落とされる場所を指す御手洗博士
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フロートは7月12日に久米島沖の海中に落とされ、22日に第1回目のデータ配信に成功したことが確認されました。(撮影:図南丸)
 

(名取 薫)

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