ただ同然な新規太陽電池

ヤビン・チー准教授の研究グループでは、コスト削減を着眼点に、新たな方法を用いて次世代太陽電池を開発しています。

   太陽光発電についてよく聞かれるデメリットとして、投資するにはやはりソーラーパネルが高額すぎるという点が挙げられます。ソーラーパネルは、エネルギーを吸収し変換するタイル状の太陽電池を並べて作られており、多くの研究者が、発電効率が高く耐用年数の長い太陽電池の開発を目指してきました。しかし、いくら寿命が長く、最高の効率で太陽光をエネルギーに変換できる太陽電池であったとしても、値段が手の出ないほど高ければ普及するのは難しいでしょう。沖縄科学技術大学院大学のエネルギー材料と表面科学ユニットを率いるヤビン・チー准教授は、異なるタイプの太陽電池を研究しています。それはペロブスカイト構造を取る半導体の一種を用いる太陽電池です。同教授の言葉を借りれば、「ただ同然」の安価な材料です。太陽電池が安価であれば、消費者は電気代の節約により速やかに元金を回収できるため、太陽電池を利用しようと思うだろうとチー准教授は考えています。そこで同教授と研究ユニットのメンバーは、新しい方法を開発してペロブスカイト太陽電池を作製しました。注目に値する本研究成果は、2014年9月5日付で英国王立化学会のEnergy & Environmental Science誌に掲載されました。

 ハイブリッド堆積法と呼ぶ新たな方法で、安価な有機化合物と無機化合物を原料とした混合物からペロブスカイト太陽電池を作製します。さらに、シリコン系太陽電池と比べて、同教授の太陽電池は厚みが約1000分の1と薄いため、生産に要する材料量も大幅に削減できます。同教授の計算によると、この太陽電池1000平方メートル分の原料にかかるのと同じ値段で、結晶シリコンを購入した場合、シリコン薄膜(ウェハー)20枚ほどとなり、従来のソーラーパネル0.16平方メートルしか製造できないそうです。「シリコン(ケイ素)自体は希少な物質ではありません」とチー准教授は述べた上で、「しかし、シリコンを加工し結晶シリコンを作るには、高温、真空、高圧といった厳しい条件が求められ、高額な機器を用いた高度な工程を要します。その結果、結晶シリコンは非常に高価になるのです。」と説明しました。一方、ハイブリッド堆積法では、はるかに低い温度条件下、少ないエネルギーで太陽電池を作製することができます。実際、同教授は、この新しい太陽電池の製造に、低コストの印刷プロセス技術を用いることを思い描いています。このプロセスでは、PETプラスチックでできた薄いシートに材料を素早く堆積させていくことで、安い太陽電池を大量生産することができます。同准教授によると、このハイブリッド電池の限界値はまだわからないものの、専門家による楽観的予測では、20%の効率が実現可能だと期待されているとのことです。つまり将来的には、この太陽電池は太陽から吸収したエネルギーの20%を利用可能なエネルギーに変換でき、市場に出回る最高効率のシリコンソーラーパネルに匹敵するレベルとなるということです。

   チー准教授と彼の研究ユニットで設計されたペロブスカイト太陽電池は、厚みがわずか135ナノメートルの極薄であり、かつ9.9%の効率に達します。このフィルムは半透明なので、同准教授は窓に利用し、軽量のブラインドのようなものにできないかと考えています。「窓であると同時に太陽電池にもなるのです」と同准教授は語り、「光の一部は透過し、残りは吸収されます。そして、吸収された光が一定の割合で電気に変換されるのです。」と説明しました。

   太陽電池の値段が下がれば、たとえ変換効率の点では二番手だったとしても、消費者は使用開始ほぼ直後から利益を得ることができます。節約したエアコン代や電気代が、導入コストを相殺するからです。「壁紙くらい安ければ、利用してみようという気になるかもしれません」とチー教授は言い、「無料ギフトみたいなものです。たくさんの見返りがある投資なのですから。」と締めくくりました。

 

ラッシュ ポンツィー

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