OISTのゲノム解読を支えるチーム

今年7月、OISTのメインキャンパス(恩納村)から車で45分ほどのうるま市に所在していたDNAシーケンシングセクション(SQC)が、OISTメインキャンパスのセンター棟に移転しました。これにより、OIST研究員にとって次世代型シーケンサーとその技術者チームが身近になりました。

 今年7月、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のメインキャンパス(恩納村)から車で45分ほどのうるま市に所在していたDNAシーケンシングセクション(SQC)が、OISTメインキャンパスのセンター棟に移転しました。これにより、OIST研究員にとって次世代型シーケンサーとその技術者チームが身近になりました。

 21世紀初頭にヒトゲノムの全塩基配列が解読され、その後、トマトからサンゴに至るまで様々な生物種の全ゲノム解読が行われています。この全ゲノム解読を可能にする技術として注目されてきた解析機器がDNAシーケンサーです。ヒトゲノム解読には従来型のDNAシーケンサーが用いられましたが、全く新しいテクノロジーを利用した次世代型の出現により大量のゲノム配列を超高速で解読できるようになりました。次世代型シーケンサーの解析手順は、まずDNAを細かく断片化し、DNA鎖の二重らせんをほどいて1本鎖のテンプレート(鋳型)にします。これらのテンプレートを一点に固定し、そこにDNAを構成する物質である塩基(A アデニン、C シトシン、T チミン、G グアニン)の水溶液とDNAの合成を行う酵素を働かせてDNAの複製を行います。複製を繰り返すことでDNA分子の束を形成した後、配列決定のための反応を行います。特定の技術に応じて、4つの塩基それぞれを異なる蛍光色素で標識したり、合成する度に微小の可視シグナルを発光させたりすることで塩基を識別します。その光をシーケンサーに内蔵されたカメラで撮影し、画像を解析することで塩基配列が決定されます。

  OIST生態・進化学ユニットのアレキサンダー・ミケェエブ准教授は、「年々、より多くの人がこの技術の可能性を認識し、研究に利用しています。」、と述べ、「2年前、OISTでこの次世代型シーケンサーを利用するグループはたった2つしかありませんでした。それが今では、利用頻度の違いはあるものの、OISTの半数以上の生物系研究グループがこの解析技術を利用しています。」と、語ってくれました。

 OISTは現在、イルミナ社とロシュ社の次世代型シーケンサーをそれぞれ3台ずつ所有しています。イルミナ社製はエラー率が低く、同じ生物種の個体間でゲノム配列を比較するのに最適です。一方、ロシュ社製は、長鎖の塩基配列の解読が可能で、ゲノム配列が未知の生物種の解析に適しています。目的に応じてシーケンサーを選定しますが、プロジェクトによっては両方のシーケンサーを使って解析を行う場合もあります。

 しかし、実際に次世代型シーケンサーの性能を最大限に活かすかどうかは、人の手を多く必要とするサンプル準備のプロセスにかかっています。例えば、高精度なデータを得るためには高品質なDNAサンプルを準備しなくてはなりません。「準備工程はSQCが突出して秀でている領域だと思います。」とOISTマリンゲノミックスユニットを率いる佐藤矩行教授は言います。次世代型シーケンサーについて同教授は、「まだ新しい機械であるという点では、使いこなすのは大変です。」と続け、「SQCのメンバーは常に新しい技術、新しい機器、新しい手法の研究に取り組んでいます。その結果、本当に素晴らしいデータを取得し、講演に招かれてその手法を発表しています。」と、説明しました。SQCのメンバーらは、「私たちは、テクノロジーが目まぐるしく変化する分野で、既存の手法にオリジナルのアイデアをとり込んで仕事を進めています。サンプル準備からシーケンシングまでの実験手法を発展させることが、高品質なデータ産出へとつながります。」と説明し、「私たちの取組みがOISTの世界最高水準の研究に貢献できると確信しています。」と付け加えました。

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