新たなナノ粒子製造技術の特許を出願

ナノ粒子技術研究ユニットが、ナノ粒子の結晶化法に関する特許を出願しました。

 沖縄科学技術大学院大学のナノ粒子技術研究ユニットでは、微小粒子に、より特定の性質を与える新たな製造技術を絶えず研究しています。彼らは、ナノ粒子のサイズと化学的組成を制御する方法を開発するなかで、今回、その結晶化度を制御する方式、またはナノ粒子内部で原子が整列する方式を発見しました。ナノ粒子の結晶化度は、粒子の光学的、磁気的および電気的性質に影響を与えます。ムックレス・ソーワン准教授と彼の研究ユニットのメンバー、カハル・キャッセディ博士およびヴィッディアダハル・シング博士は、彼らが編み出したこの方式について特許を出願しました。この方式では、さまざまな結晶化度の半導体ナノ粒子を生成する方法について正確に述べています。

 「大抵の科学者そして企業でさえ、最近は彼らの用途またはデバイスに最適化されていないナノ粒子を使用しています」と、ソーワン准教授は説明します。「我々はいつか、ナノ粒子を特定の用途に最適化したいと思っています。」しかし、そのためには、ナノ粒子技術研究ユニットのメンバーは、結晶化度など、ナノ粒子のいくつかの基本的な性質を制御する方式を解明しなければなりません。単結晶ナノ粒子では、そのすべての原子が規則正しく配列している一方で、アモルファスナノ粒子では原子は不規則な状態にあります。多結晶構造では、原子が規則正しく配列したいくつかの領域からなりそれぞれの領域は結晶粒として知られています。同素材であっても結晶化度の相違により全く異なる性質を示します。例えば、煤は結晶粒を持たないアモルファス状態の炭素ですが、ダイヤモンドは結晶構造をとっています。

 一般的に、バルク半導体材料の結晶化を誘導する方式は知られていますが、「微小な半導体ナノ粒子の結晶化度および結晶の数を制御するのはこれが初めてなのです」と、ソーワン准教授は述べています。同准教授が特定の性質を制御することができる理由の一つは、彼らが用いた実験方法によるもので、改良型ナノ粒子局所堆積装置に基づいています。この装置の最も重要な機能の一つは、高真空チャンバー内で生成されたフレッシュな半導体ナノ粒子が別のチャンバー内に置かれた基板まで飛行し堆積するまでの間に、粒子同士がどの様に相互作用し、またはどの様に粒子が装飾されるかを解明可能にする点です。「その基板もまた問題を含んでいます」と、ソーワン准教授は説明します。「なぜなら基板は、ナノ粒子の性質に常に影響を与えるからです」。新たに提案された方式に記述されたステップに従うと、まずナノ科学者は、対象となる飛行中のナノ粒子に金属原子のビームを当てます。金属原子はナノ粒子の表面上に拡散し、ほんの数ナノメートルの大きさの金属ナノクラスターを形成し、生成物の結晶化を誘導します。次に、非常に簡単な物理的処理であるプラズマクリーニングによって選択的に金属ナノクラスターのみを取り除きます。その結果、目的の結晶化度の無傷の半導体ナノ粒子だけを得ることができます。

 OISTが出願した特許は、この方式に関するものです。「ソーラーセルまたは医療バイオイメージングなど、第3者がこの方式を使用して商業化する場合、OISTから使用許可を取得する必要があります。また、研究などでこの特許技術を使用する場合、OISTをクレジットしなくてはなりません」と、ソーワン准教授は述べています。結晶化度の制御は、より特別なナノ粒子を生成するために制御したい数多くの性質の一つであるとも述べています。最終的には、このような結晶化度の制御は、ナノ粒子をカスタマイズするルールブックにおいて新たな指針の一つとなり得るものです。

 詳細情報 -- 特許出願公開番号: WO 2014141662 A1, Metal Induced Crystallization of Semiconductor Quantum Dots

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

シェア: