沖縄産難消化米で生活習慣病予防を目指す

OISTの佐瀬英俊准教授をはじめとする研究グループは、生活習慣病予防に役立つ難消化米の開発に乗り出しました。

 近年沖縄県では、肥満率の高さなど、県民の生活習慣病予防が早急の課題とされています。この課題に取り組むべく、OIST植物エピジェネティクスユニットの佐瀬英俊准教授がプロジェクトリーダーを務める研究グループは、「医食農連携により、安全で優れた生活習慣病予防効果を持つ新しい食材を沖縄に!」の掛け声の下、県委託事業である難消化米の開発に乗り出しました。この事業は、米の育種研究グループ、機能評価研究グループ、加工から販売を担当するグループからなり、佐瀬准教授は同ユニットの島尻恭香技術員と共に米の育種開発に取り組みます。

 難消化米とは、ブドウ糖に分解されにくい性質をもつデンプンを高率に有する新しい品種の米で、約30年前に九州大学の研究チームが開発を始めました。米などの炭水化物は、消化の過程でブドウ糖に分解され、主要なエネルギー源として利用されますが、過剰なブドウ糖は肥満や糖尿病をはじめとする生活習慣病の原因となります。よってブドウ糖を産出しにくい難消化米の代替利用は、生活習慣病予防の一手段になると期待されています。さらに難消化米には、血糖値の上昇を抑える効果をはじめ、血中中性脂肪とLDL(悪玉)コレステロールを低下させる効果、肝臓への脂質蓄積抑制効果を裏付けるデータも集まり始めており、肥満のみならず生活習慣病をトータルに予防する効果も期待されています。

 しかし当初、すでに開発された難消化米を沖縄で栽培し始めたところ、収穫量が本州と比べて約半分まで減少することが分かりました。そこで佐瀬准教授の育種研究チームは、ゲノム情報を用いて難消化米を沖縄の気候に適した地産の品種と効率的に掛け合わせることで、その性質を遺伝的に導入することに着手しています。特にOISTでは、次世代ゲノムシークエンサーによる遺伝子情報の解析や、日照時間や温度調節が可能な人工気象器を用いた栽培期間の短縮化を行い、難消化米育成の効率化を図っています。また、地産の事業として安定した生産と供給を行うためには、沖縄の米生産者の協力が不可欠で、そのためには難消化米の有益性を明確なデータとして示すことも大切です。「難消化米は様々な食品に応用可能です、この取り組みを通じて、人々の健康増進に寄与できればと思います」と佐瀬准教授は語っています。

 本プロジェクトでは、沖縄産難消化米の開発と平行し、琉球大学医学部、大阪府立大学、石川県立大学が医学・生理学的機能研究を行い、人体への有益性をさらに評価していきます。また、県内数社の食品加工会社が参加し、難消化米から得た米粉を利用した加工品の開発も始まっています。近い将来、主食から土産品に至るまで、健康に配慮した沖縄産の食品が発売されることに期待が寄せられます。

西岡 真由美

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