沖縄北部やんばると石垣島で新種のゾウムシを発見

新種の「リュウキュウカレキゾウムシ」は、人間の存在に特に敏感で、特徴的な姿をしていました

Acicnemis ryukyuana

手つかずの亜熱帯林が残る沖縄本島のやんばる国立公園と石垣島で新種のゾウムシが発見されました。

日本と台湾の間に位置する亜熱帯の島々からなる琉球列島は、豊かな生物多様性があることで知られています。独自の進化史を持つことから、特徴的な固有の昆虫相が存在しています。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、2015年から沖縄本島各地に網を設置し、甲虫、ハエ、スズメバチ、ハチなど様々な昆虫を捕獲し、観察してきました。捕獲した昆虫はエタノール内で保存され、乾燥後にOISTの昆虫標本集に加えられます。この研究活動の中で、OIST環境科学・インフォマティクスセクションで標本コレクションを管理する昆虫学者ジェイク・H・ルイスさんによって顕微鏡分析と解剖が行われ、リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)が新種であることが確認されました。

ルイスさんは、2022年にOISTに着任すると、すぐに学内のゾウムシ標本集に飛びついたと話します。「詳しく観察するなか、この種を見つけた途端、目が釘付けになりました。この種がカレキゾウムシ属(Acicnemis)に属することは明らかでしたが、東アジアで確認されている他の種とは異なっていたからです。細長い鱗毛と独特の模様が、日本で確認されている従来の種とは異なっていました」と発見した時のことを振り返ります。

今回新たに発見されたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)(A) と沖縄に生息する他のカレキゾウムシ
図1-今回新たに発見されたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)(A) と沖縄に生息する他のカレキゾウムシ。A)リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)、B)セグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)、 C)アズマカレキゾウムシ(Acicnemis azumai)、 D)ホソカレキゾウムシ(Acicnemis exilis)、 E)マダラカレキゾウムシ(Acicnemis maculaalba)、F)ナカグロカレキゾウムシ(Acicnemis kiotoensis
図1-今回新たに発見されたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)(A) と沖縄に生息する他のカレキゾウムシ。A)リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)、B)セグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)、 C)アズマカレキゾウムシ(Acicnemis azumai)、 D)ホソカレキゾウムシ(Acicnemis exilis)、 E)マダラカレキゾウムシ(Acicnemis maculaalba)、F)ナカグロカレキゾウムシ(Acicnemis kiotoensis

カレキゾウムシ属には180種以上が属しており、新種であることを確認するには、既存の文献や博物館の標本集を入念に調べる必要があります。カレキゾウムシ属の「タイプ標本(種を記載する際に基準となる標本)」は、ヨーロッパや日本の博物館に収蔵されており、ルイスさんは、九州大学総合研究博物館、イギリスの大英自然史博物館、ドイツのSenckenberg German Entomological Instituteという昆虫学研究所など、複数の機関に問い合わせ、今回発見されたカレキゾウムシが新種であることを確認しました。

現在明らかになっている限りでは、リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)は琉球列島でしか生息していません。その名前は、琉球列島の生物多様性を構成する固有種であることを強調するため、「琉球からの」という意味を持つryukyuanaが学名に付けられ、和名は「リュウキュウカレキゾウムシ」と名付けられました。 ゾウムシは地球上で最も多様な動物群のひとつであり、通常は植物を食しますが、なかには、特定の植物のみを食す種も存在します。今回発見された新種がどのような植物を食べて生きているのかは、まだ明らかになっていません。ルイスさんは、今後さらに野外調査を行い、その答えを突き止めたいと考えています。

リュウキュウカレキゾウムシの特徴

リュウキュウカレキゾウムシは、両肩に黄色い縞が入り、丈夫な前翅に灰色、黒色、黄色の鱗片が生えた特徴的な模様をしているため、他のゾウムシとの違いを容易に区別することができます。また、顕微鏡で観察すると、背中や脚の下の方に長い鱗毛があるという特徴も確認できます。

このユニークな特徴から、この新種は東南アジアに棲息する他の種の近縁であると思われますが、確証を得るためにはDNA解析を行う必要があるとルイスさんは話します。

「私の出身国であるカナダでは、ゾウムシの研究が進んでいます。沖縄には、まだ生態がよく分かっていない固有種が多く棲息しているやんばる国立公園があるので、ここ沖縄での生活は最高です。琉球列島には、ここでしか見られない種がたくさん存在しているため、私のような分類学者にとっては非常に魅力的な場所です」とルイスさんは熱く語ります。

図特徴的な模様と脚の形をしたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)
図2 -図特徴的な模様と脚の形をしたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana):(A)リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)は、両肩の黄色い縞と前翅の模様で見分けることができる。また、脚の跗節(ふせつ)の形状も非常にユニークで、大きな割れ目がないのが特徴である。カレキゾウムシの仲間の大半は、(B)のセグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)のように跗節に大きな割れ目があり、ハート型になっている。
図2 -図特徴的な模様と脚の形をしたリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana):(A)リュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)は、両肩の黄色い縞と前翅の模様で見分けることができる。また、脚の跗節(ふせつ)の形状も非常にユニークで、大きな割れ目がないのが特徴である。カレキゾウムシの仲間の大半は、(B)のセグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)のように跗節に大きな割れ目があり、ハート型になっている。
X線マイクロトモグラフィーによる3Dモデル。新種のリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)とセグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)の脚の形状の違いがはっきりと見て取れる
図3-X線マイクロトモグラフィーによる3Dモデル。新種のリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)とセグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)の脚の形状の違いがはっきりと見て取れる。脚の2番目の節の形状は、セグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)では均等に湾曲しているが(A・B)、新種のリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)では内側が波状になっている(C・D)。
図3-X線マイクロトモグラフィーによる3Dモデル。新種のリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)とセグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)の脚の形状の違いがはっきりと見て取れる。脚の2番目の節の形状は、セグロカレキゾウムシ(Acicnemis postica)では均等に湾曲しているが(A・B)、新種のリュウキュウカレキゾウムシ(Acicnemis ryukyuana)では内側が波状になっている(C・D)。

人間の存在に敏感なリュウキュウカレキゾウムシ

人間の存在に敏感なリュウキュウカレキゾウムシ OISTの研究チームは、沖縄本島の人口密集地や、人為的干渉の影響がある地域を含む、幅広い範囲に捕獲用ネットを設置しましたが、リュウキュウカレキゾウムシが捕獲されたのは、やんばる国立公園の手つかずの特別保護地区のみでした。また、石垣島でも保存状態の良い亜熱帯林で同じ新種が採集されており、ルイスさんはこの標本を九州大学総合研究博物館の標本集の中から発見しました。これらの採集場所を考慮すると、この種は琉球列島で多く見られる他のカレキゾウムシよりも人為的干渉に敏感であると見受けられます。

ルイスさんは、「今回発見された新種の甲虫は、飛べない鳥ヤンバルクイナや、ヤンバルテナガコガネ、オキナワトゲネズミなどのように、琉球列島に固有の脆弱な動物の一種といえるかもしれません 。琉球列島でまた新たな珍しい種が発見されたことに、沖縄の分類学者、保全生物学者、地元の博物学者は、きっと関心を持つことでしょう」と述べ、沖縄における生物多様性の研究がさらに進展することへの期待を寄せました。

nvironmental Science and Informatics Section (OIST) staff member Jake Lewis is working on taxonomy and evolution of weevils
OIST環境科学・インフォマティクスセクションでゾウムシの分類学と進化に関する研究を行っているOIST職員のジェイク・ルイスさん。現在ルイスさんは、アジア各地の新種を発見し記載するため、顕微鏡、解剖、DNA分析、X線マイクロトモグラフィーなどの様々な技術を駆使して研究を行っている。
OIST環境科学・インフォマティクスセクションでゾウムシの分類学と進化に関する研究を行っているOIST職員のジェイク・ルイスさん。現在ルイスさんは、アジア各地の新種を発見し記載するため、顕微鏡、解剖、DNA分析、X線マイクロトモグラフィーなどの様々な技術を駆使して研究を行っている。

 

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