一橋大学のMBA学生がOISTで「科学とビジネス」の未来を切り拓く

OIST発スタートアップに5名の学生がインターン生として参画しました

Innovation sign

研究室で生まれた革新的な技術を市場に送り出すには、優れた研究成果だけでは十分ではありません。科学的発見の事業化を加速するには、専門的なビジネスの知識と、戦略的なサポートが不可欠です。こうした科学とビジネスのギャップを解決するために、OISTは、MBAランキング国内トップ1である一橋大学と、起業を目指す研究者と社会経験のあるMBA学生をつなぐ、「OIST- 一橋インターンシップ・プログラム」を創設しました。

今回インターンシップに参加したのはラストギ・ヴィオムさん、張珂(チョウ・カ)さん、プンヤワディ・ヤンスパノンさん、ホアチ・ジンさん、マック・サラさんの5名。学生たちはOIST発スタートアップの創業者や起業を目指す研究者とのマッチングを経たのちに2週間から2か月の間、恩納村のキャンパスに滞在しながら、市場分析、ビジネスモデルの構築、資金調達戦略など実践的な活動に取り組みました。

一橋のインターン生
左から、ラストギさん(インターン生)、ヤンスパノンさん(インターン生)、グラノット-マイヤーさん(OIST 技術開発イノベーション担当首席副学長)、張さん(インターン生)
左から、ラストギさん(インターン生)、ヤンスパノンさん(インターン生)、グラノット-マイヤーさん(OIST 技術開発イノベーション担当首席副学長)、張さん(インターン生)

インド出身のラストギさんは、2021年にOISTからスピンオフで生まれたWatasumi社に配属されました。同社は特殊なバクテリアを使用することで、排水を浄化すると同時にエネルギーを生み出す実証実験を展開しています。ヴィオムさんは、Watasumi創設者のデイビッド・シンプソンさんと日々議論を交わしながら、日本およびアジア地域における潜在的なマーケット調査や、沖縄県内の顧客との関係構築など、スタートアップ戦略の重要な活動に携わりました。

「一橋で学んだ知識をWatasumi社の戦略の現場で生かすことができたのはとても良い経験でした。起業家たちの生き方は一見キラキラしているように見えますが、彼らが日々実際に行っている過酷な仕事は見逃しがちです。自ら汗水流し道を切り拓く、これは起業家の単なるイメージではなく、彼らの人生そのものです。その日々の積み重ねが彼らの優れた能力を輝かせていると感じます。」ラストギさんは、日々のシンプソンさんとの対話により、起業家に対する考え方が変わったといいます。

Watasumiの創業者のシンプソンさんは、ラストギさんとの交流を通じて逆に得ることもあったと話します。「短い間でしたが、トヨタで働いていたこともあるラストギさんの知識や経験がWatasumiでも活かされるようになったと思います。ラストギさんのアイディアを取り入れることで、製造方法を改善できる可能性があるという気付きを得ることができました。このプログラムでは、通常では不可能な方法で沖縄を体験することができます。ぜひ今後も多くの学生に参加してもらい、私たちのイノベーションを支援していただきたいです。」

ラストギさんの将来の夢は、未来の世代のために今の世界をより良い場所にすることだといいます。「サステナビリティの分野で自分自身のベンチャー企業を立ち上げてみるのも魅力的ですが、Watasumi社のシンプソンさんのように、人類共通の利益のために最善を尽くそうとする情熱的な人と一緒に働くこともいいですよね。」ラストギさんは、様々な可能性に期待を膨らませていました。

シンプソンさんとラストギさん
インターンのラストギさん(左)と、Watasumi創業者のシンプソンさん(右)
インターンのラストギさん(左)と、Watasumi創業者のシンプソンさん(右)

OIST発のスタートアップであるEFポリマーに配属されたのは、中国出身の張珂(チョウ・カ)さんです。同社は主に、干ばつ見舞われやすい地域の農家などを支援するために、自然由来の吸水ポリマーを開発しています。約2か月に渡ってプログラムに参加した張さんは、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)推進プロジェクトの開発と実施、中国や米国市場の調査とマーケット戦略などに取り組みました。

この経験は、張さんの今後のキャリアの方向性を決める上で有意義な知見を与えてくれたと話します。「起業におけるサステナビリティとは何かを学べたことが大きな収穫でした。インターンシップに参加するまでは、スタートアップと成熟した企業が行っているサステナビリティの取り組みの違いに気づきませんでしたが、前者はガバナンスといった面からではなく、環境・社会的なより直接的な側面から、独自の方法でサステナビリティの実現に取り組んでいる印象を受けました。」

インターン生には、企業での実践的な活動に加え、知的財産セミナーといった、OISTの様々な研修機会も提供されました。張さんはOISTでの体験を振り返り、「今回のプログラムを通し、マーケティング、コーポレートファイナンス、戦略立案など、大学での学びを活かすとともに、自分の興味のある研究を見極める練習になりました」と述べました。

インターン生の受け入れを担当したOIST 技術開発イノベーション担当准副学長のローレン・ハさんは次のように述べています。「理系の学生を対象としたOISTでのインターンシップ・プログラムはこれまでも実施してきていますが、MBA学生をインターンとして受け入れるのは今回が初めてでした。ヴィオムさん、張さん、そして他の学生の皆さんが私たちのスタートアップ企業や研究チームに与えたポジティブな影響と貢献を踏まえて、私たちはこのプログラムを継続することにしました。今後も一橋大学から次のビジネススクールの学生を受け入れることをとても楽しみにしています。」


1 QS Global MBA Rankings 2022: https://info.ics.hub.hit-u.ac.jp/en/qsranking2023-no.1mbainjapan-0

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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