光の強度分布で粒子のふるまいはどう変化する?

光に捕捉された微粒子間の相互作用は、光の強度分布により異なることがわかりました。

 光には様々な形態があります。日常生活の中でも、例えば太陽光線は、蛍光灯の光とは非常に異なります。物理学研究では、光と微粒子の相互作用の研究において、光の強度分布は大きな差異を生じさせます。この度、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、オーストリアのInnsbruck大学の研究者らと共に、光に捕捉された微粒子間の相互作用が、光マイクロファイバーに沿って分布し、さらに光の特徴により粒子の動きのスピードが異なることを発見しました。本研究結果はScientific Reports (サイエンティフィック・リポーツ)に掲載されています。

 光マイクロファイバーに沿って光の強度を分配することは、物理学の世界のみならず、生物学の世界でも、多様な応用の可能性のある微粒子操作の手法として使われています。光と光マイクロファイバーを利用する方法は、主に二つあり、ひとつは基本モードで、もうひとつは高次モードです。基本モードとは、光のビームの中央でエネルギーが最も高く、両端に行くにつれてエネルギーが低くなる基本的な光の強度分布です。これ以外の形状の光は、高次モードに分類され、ある特定の結晶に光を通すことで作られます。

 OISTの研究チームは以前、基本モードの光よりも高次モードの光を使うほうが、単一の粒子をより高速で捕捉し、移動させることを発見しました。今回は、複数の粒子を扱った場合の粒子の相互作用とスピードの変化を、基本モードと高次モードにおいて、より詳細に観察しました。光マイクロファイバー周辺の光に複数の粒子が捕捉されている場合、特定の秩序に沿って粒子は配列しますが、これを光学結合効果と呼びます。

 これらの粒子の相互作用を探求するため、研究チームは光学ピンセットを使い、最大5つの粒子を補足しました。それから光マイクロファイバーに向かって粒子を移動させ、マイクロファイバーの周辺の光照射野に放ち、マイクロファイバーに沿って粒子が移動する速度を測りました。

 OISTの特別研究学生のアイリ・マイマイティさんは次のように説明しています。「基本モードでも高次モードでも測定を行い、高次モードでは粒子に異なる効果が現れることを発見しました。高次モードでは、より多くの粒子が追加されたときに、粒子全体のスピードが遅くなり、基本モードではその逆になるのです。」

 研究チームはまた、移動する複数の粒子間の距離の計算もしました。チームは粒子をひとつずつ加え、最大5つになるまで、毎回この計算を行いました。すると光源から離れるほど、粒子と粒子の空間、つまり粒子間距離は小さくなることを発見しました。そして光源に近づくほど、空間は広くなるのです。基本モードと高次モードとの違いを見ると、高次モードでは、粒子間距離は小さくなることを発見しました。

 「これは高次モードでは、結合効果が異なることを証明するものです。」とマイマイティさんは語ります。

 研究チームは実験で見られた発見を説明する理論的なモデルも構築しました。そのモデルでは、光に捕捉された粒子は、光の中で光を反射・伝播する鏡のような役目をし、これが相互作用を引き起こしていると説明しています。

 チームは光に捕捉された粒子間における相互作用を理解することの重要性に焦点をあてました。高次モードでの粒子のふるまいのような物理的現象の理解は、粒子の位置のコントロールをしやすくするばかりでなく、1Dクリスタルのような構造の中での原子の鎖の量子効果を研究する際にも役立つでしょう。

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

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