新研究ユニットの紹介:カスタムメイドのナノ粒子

OISTナノ粒子医工学応用技術研究ユニットを率いるムックレス・ソーワン准教授は、ナノ粒子のカタログを作成して、その用途をさらに広げたいと考えています。


ご覧いただく映像は、OISTナノ粒子医工学応用技術研究ユニットが開発したナノ粒子局所堆積装置です。


ナノ粒子医工学応用技術研究ユニットのメンバー

 ナノテクノロジーは科学の世界で現在最も注目を集める分野の一つです。ナノ粒子は抗菌作用のあるスポーツ用品から半導体製品、果ては日焼け止めまで、あらゆる物に使われています。 OISTナノ粒子医工学応用技術研究ユニットを率いるムックレス・ソーワン准教授は、ナノ粒子のカタログを作成して、その用途をさらに広げたいと考えています。このカタログがあれば、宅配ピザを注文するのと同じぐらい手軽にナノ粒子をカスタムメイドできるようになるのです。

 物質は、微小な粒子の状態にある場合、それより大きな構造の中にある時とは異なる特性を示す傾向があります。実はこの特性がナノテクノロジーの基礎となっています。例えば直径が0.0001ミリメートル以下の銀ナノ粒子は、銀でできたフォークとは異なる光学的、電気的、化学的性質を示します。そして、これらの特性は、ナノ粒子が多くの用途に応用できることを意味します。事実、銀のナノ粒子はすでにエレクトロニクスから絆創膏、家庭用品のコーティングなどに利用されています。

 しかしながら、ナノ粒子を生成するための化学ベースの今日の技術は厳密にコントロールすることが難しく、生成されるナノ粒子のサイズや組成は異なります。 加えて、既製のナノ粒子を利用する研究者の選択肢は限られています。そこで、ソーワン准教授の出番となります。同教授は、化学溶液ではなく真空チューブ内で分子を集合させてナノ粒子を生成する方法を開発しました。この方法により、ナノ粒子の組成をよりコントロールできるようになりました。例えば、ナノ粒子の中心部と外側部分をそれぞれ別の物質で生成するといったことも可能です。また、真空チューブはナノ粒子をその大きさによって選別することができるため、より精密にオーダーメイドすることが可能になります。ソーワン准教授は、「ナノ粒子の大きさと組成の違いを利用して、その集合体の特性を調整するのです。」と説明しています。この新しいナノ粒子生成システムは6月下旬に完成予定です。

 それまでソーワン准教授の研究ユニットでは、電気的、光学的、化学的性質をはじめとするナノ粒子の特性やその構造を明らかにするために、新システムの細かい最終調整を行っています。同システムがいよいよ完成し、稼働し始めれば、異なる種類のナノ粒子を作り、その特性を調べた上で、自分たちや共同研究者が利用するカタログにそれらを追加することができます。このように研究仲間に情報を提供することで、今度は彼らからナノ粒子の特性についての新たな情報を貰えるというわけです。

 この他、ソーワン准教授の研究ユニットでは、ナノテクノロジーの応用について研究も行う予定です。同教授が特に関心を寄せているのが、新しい癌治療法、薬物送達システム、赤外線検出、センサーの開発です。しかし、将来の応用範囲はこれにとどまりません。「基本的に、私のナノクラスターは何らかの形で皆さんが必要とするものです。」とソーワン准教授は語ります。全て予定通り事が運べば、数年以内には、非常に特殊なオーダーメイドのナノ粒子を注文するために、共同研究者から電話がかかってくることが予想されます。

ショーナ・ウィリアムズ

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