畜産農業の排水処理

沖縄県において養豚業は、島の経済と文化にとって大きな役割を担っています。豚肉は沖縄の食生活において重要な食材であり、沖縄料理店で提供される多くの料理にも使われています。しかし、養豚場からは大量の排水が発生しており、環境に悪影響を及ぼします。

排水中の硝酸やリンは、人の健康と環境の両方に深刻な影響を及ぼす可能性があります。現在、一般的に利用されている排水処理技術は活性汚泥法(曝気装置)ですが、この方法では硝酸もリンも効率よく除去できません。これらの化合物を排水から除去するには、この後により高度な処理を行う必要があります。 

この問題を解決するため、生物システムユニットの研究チームが低コストかつメンテナンスも少なくて済む新たな排水処理装置を開発しました。 

同装置は2槽式(チャンバー) になっており、1つの装置で2種類の排水を処理します。一方のチャンバーでは、養豚原水を処理して臭気や病原菌、有機物等を除去し、もう一方のチャンバーでは、処理の過程で発生するエネルギー(電子)を利用して、従来の曝気槽で処理した排水から余分な硝酸とリンを除去します。2つのチャンバーはイオン交換膜で隔てられています。

新装置は、イオン交換膜で隔てられた2つのチャンバーを持つポリアクリル製の反応装置と3つの電極で構成されている。

 

新装置では、排水処理を行うと同時に、排水から大切な栄養素を回収する細菌群が必要です。畜産農家で現在使用されている従来の曝気装置は主に排水中の有機物処理を目的としており、また排水中のアンモニウムを硝酸に変換しますが、硝酸をさらに分解することはありません。新装置は、このような従来の装置と一線を画すものです。同装置についての詳細はこちらからご覧ください。

 

主に有機物を処理してアンモニウムを硝酸に変換する従来の曝気施設。

 

実験室での検証に成功した後、研究チームは沖縄県環境科学センターと(株)沖動薬の協力を得て、沖縄県畜産研究センター施設内の養豚場で最初の実証実験を行いました。本プロジェクトは「産官学連携コンソーシアム」からの支援と沖縄県からの補助を受け、1年以上にわたってモニタリングを行いました。本研究は、OISTの実証実験プログラムおよび沖縄科学技術イノベーションシステム構築事業として継続されます。

プロジェクト協力団体・個人

  • 沖縄県環境科学センター生活科学部長 風岡雅輝氏
  • 沖縄県畜産研究センター所長 鈴木直人氏

プロジェクト関連出版物

  • Prokhorova, A., Kainuma, M., Hiyane, R., Boerner, S., Goryanin, I. (2021) Concurrent treatment of raw and aerated swine wastewater using an electrotrophic denitrification system. Bioresource Technology, Volume 322, 124508. https://doi.org/10.1016/j.biortech.2020.124508

To ensure access to safe water sources and sanitation for all