OISTの物理学者がHFSP研究助成金を獲得

この度、OISTのマヘッシュ・バンディ准教授らによる国際的な研究プロジェクトが、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの若手研究者グラントを獲得しました。

 この度、OISTのマヘッシュ・バンディ准教授と共同研究者による国際的な研究プロジェクトが、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)若手研究者グラントを獲得しました。ヒトの歩行に安定性をもたらす土踏まずの役割及び化石記録に刻まれた進化に関する研究に対し、毎年35万ドルが3年に渡り助成されます。

 ヒトの足の構造が猿人から現代人への進化の過程で変化していることが化石記録から判明しており、足の生体力学的研究は、どのように二足歩行へと発展していったかを解明するのに役立つとバンディ准教授は言います。物性物理学の研究者であるバンディ准教授は、足の力をとらえる光弾性装置を構築し、ヒトの祖先やチンパンジー、現代人の足の複製を作ります。研究チームを率いるインド国立生命科学研究センターのバイオメカニクス研究者であるマドゥスダン・ヴェンカデッサン博士は、実験を行うためのランニングトラックを開発し、足の化石データを提供します。米国ブラウン大学の応用数学者、シュレイアス・マンドレ博士は、ランニングトラックに組み込まれる光弾性装置を用いて複製の足に加わる力を測定するアルゴリズムを開発します。

 「私たちは、科学の根本的な問題を解明する技術の開発に取り組んでおり、この技術は、例えば義足などの実社会への応用が期待されます」とバンディ准教授は言います。

 同研究プロジェクトのアイディアは、バンディ准教授が、2012年初めにヴェンカデッサン博士の研究室に講演者として招待され、昼食を取りながら生体力学について話し合っていた際に持ち上がりました。更に、バンディ准教授がブラウン大学を訪問中に、マンドレ博士の興味を刺激しました。3名の博士は共に、最近准教授の職に就きました。

 バンディ准教授は、「この研究助成金は、私たち若手研究員にとって大きな励みとなります」と述べ、「私たちは、従来の研究領域を越える新たなアイディアを見つけましたが、それを追求する機会をHFSPが与えてくれました。」と語りました。

 この研究助成金が求める候補者の条件として、これまでに共同で研究を行ったことのない研究者同士で構成されたチームであること、少なくとも1人は生命科学以外の分野を専門とする科学者を含んでいること、国際的かつ学際的であること、などが挙げられます。それに加え、HFSPは研究の革新性も重要な審査基準の1つとしています。HFSPに提出された研究計画書の数は700件に上り、そのうち94件が最終的な申請書の提出を求められました。その3分の1が「若手研究者グラント」に対する応募で、バンディ准教授の研究チームは最終選考で3位に選ばれ、他の9つの研究チームと共に若手研究者グラントを獲得しました。

 「HFSPが掲げる理念は本質的にOISTと共通しています。」とバンディ教授は言います。

 3人の研究者は、フランスのストラスバーグで7月上旬に開催されるHFSP受賞者の年次総会に出席します。