2012-06-05

膜タンパク質の実態を明らかにする

 べん毛を示すサルモネラ菌の画像。OIST生物資源セクションの佐々木敏雄氏の協力により電子顕微鏡で撮影。

 ここ数十年、生き物の仕組みを研究するのに用いられる手法は劇的に進歩しており、より高性能な画像解析法、全ゲノム配列決定、膨大なデータへのアクセスなどが可能になりましたが、細胞には依然として謎が残されています。そうした謎には、細胞の外皮、すなわち細胞膜に埋め込まれた多くのタンパク質があり、その構造や機能を解析することは困難なことで有名です。ファデル・サマテ准教授率いる細胞膜通過輸送研究ユニットでは、ある膜タンパク質複合体に対して、いわゆる「良い警官・悪い警官戦術」を用いて2つの異なる方法で情報を引き出すことをめざしています。

 膜タンパク質の構造を明らかにするために、研究者は通常、比較的大量のタンパク質を採取して精製し、X線結晶解析法のために良質な結晶を形成する必要があります。しかし、界面活性剤を使って膜タンパク質を精製する必要があり、それによって結晶化が阻害されるとサマテ教授は説明しています。また、結晶を形成するのに十分な量の膜タンパク質を得るのも困難です。このように膜タンパク質構造の研究は非常に厄介なため、大半の研究者はそうした研究を避けており、また敢えて研究する研究者も、プロジェクトに何年も費やしても全く成果が挙げられないといったこともあります。それにもかかわらず、サマテ教授は長い間、これらの謎めいたタンパク質に惹きつけられています。「私は挑戦が好きなのです」と、同教授は話します。彼のユニットは、ある種の細菌を動かすらせん状べん毛の構築に関わる膜タンパク質複合体を研究しています。この構造は、一部の細菌が宿主細胞に毒素を注入するのに用いる針を構築する複合体に極めて似ており、この構造についてもっと多くの情報を得ることができれば、大腸菌やサルモネラ菌などの病原菌による感染の防止や治療に役立つ可能性があります。

 ユニットのメンバーの一部は、タンパク質の構造を解析するのに精製・結晶化手法を用いていますが、クライブ・バーカー研究員は異なる手法をとっています。べん毛を構築するタンパク質は、細菌種の間で極めて類似しているため、彼はある細菌種のべん毛タンパク質の1つの遺伝子を別の種の遺伝子と交換し、その細菌を軟寒天で培養して、それらが泳いでいるかどうかを調べます。数世代の間にわたって細菌は静止したままであり、機能的べん毛がないことを示していますが、その後移動の痕跡が寒天に現れ始め、一部のコロニーが新しいタンパク質に適合したことが分かります。バーカー博士は、これらの細菌のゲノムを配列決定して、適合が起きた場所を解明します。これが、交換したタンパク質がどのタンパク質と相互作用するのか、まさにその働きを知る手掛かりとなるのです。この手法はすでにいくつかの驚くべき結果を生み出していますが、本当によく理解するにはタンパク質の構造が必要であると、バーカー博士は述べています。良い警官と悪い警官の両方を送り込むことにより、ユニットのメンバーらは、難しいテーマを解決しようとしています。

(ショーナ・ウィリアムズ)

広報や取材に関して:media@oist.jp