老犬に新しい芸を教えることができますか?

  人間にも鳴き鳥にも、生涯の早い段階で驚くべき学習期がありますが、残念ながら早い時期で終わってしまいます。この仕組みが解明されれば、大人になってからの語学学習や楽器の練習が大変である理由を説明できるかもしれません。

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OISTにやってきたキンカチョウ
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短期間で終わってしまう臨界期について説明する杉山(矢崎)博士
 

  幼児の成長中の脳は、聞いた内容から異なる可聴音を保存し再生できます。幼児の脳のニューロンには柔軟性があり、いわゆる神経に可塑性が見られる時期の臨界期にあり、この間のニューロンは本人が聞いた内容により形成されます。

  「鳴き鳥の若鳥を観察すると、「臨界期」の存在が理解できます。特にキンカチョウの神経システムは十分理解されています」と、2011年8月よりOIST臨界期の神経メカニズム研究ユニットの代表研究者として参加している杉山(矢崎)陽子博士は述べています。鳴き鳥は人間が行うのと似た方法で歌を学ぶ唯一の鳥です。

   約6カ月齢までの若いキンカチョウは、父親の歌を聞き、それを記憶します。実験では、その後に若鳥を父親から離すと、記憶した歌を真似して歌おうとする姿が見られました。父親の歌を記憶し真似するという能力は、その鳥の年齢と聴覚経験に依存します。この年齢より上になってしまうと、新しい歌を聞いても、それを覚えて歌えるようになる可能性は低くなります。

   同様に、人間も言語を学ぶのは聴覚経験に依存します。母語ではない言語の言葉を正しく発音できるかは、若い時期にその発音を聞いていたかによります。年を重ねるにつれて、そうした言葉を理解し、記憶し、正しく発音することが往々にして難しくなります。

  早期の発育段階で経験によってどのようにニューロンが形成され、何が臨界期を終わらせるのかが理解できれば、なぜ私たちが年をとるにつれて新しい事を学ぶことが難しくなるのかを解明する重要な鍵になります。「もし、これを解明できれば、こうした神経メカニズムを再活性化することにより、例えば、年をとった段階でも新しい言語を学ぶ助けになり、怪我をした後の身体的なリハビリを容易にすることができるかもしれません」と、杉山(矢崎)博士は述べています。

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