コロナ緊急提言 入域時検査の強化を

「昨日から学び、今日のために生き、明日に希望を抱け。大事なのは問うことをやめないことだ」。アルベルト・アインシュタインのこの言葉を、最近私は何度も思い出しています。新型コロナウイルス感染症流行の第1波では、感染数は比較的少なく、沖縄では何週間もウイルス感染者が出ませんでした。この間、私たちは3密(密閉、密集、密接)を避ける、マスクを着用する、高齢者や重症化リスクの高い人を保護する、社会的距離を保つ、そして手洗いを徹底するといったことを学び、そうした対策が功を奏しました。

 その後、移動制限の緩和で国内旅行が再開されたのを、島々の住民は不安を募らせながら見守っていました。新たな感染があるとすれば、それは外からやって来ることは明らかでした。

 現在、沖縄は人口10万人当たりの感染者数が全国で最も多くなっています。7日は100人の新規感染を記録しました。日別値と累計感染者数は、第1波の時よりも大幅に増加しています。

 その結果、県内の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)しています。医療従事者数も不足しており、沖縄県は急遽、即戦力のある医療従事者の募集を始めました。

 すでに定員の130%近くになった病院では、300人以上の患者が入院待機していると言います。

 先日、那覇市の高齢者施設で70歳から100歳までの入所者と職員から7人の感染者が確認されたことについては、大いに憂慮すべきです。最近の新たな感染者の多くは若者たちの間で見られ、ナイトライフに関連していましたが、沖縄ではこのように社会の中で最も脆弱な人たちにまで達しています。

 米軍基地で関係者の入国に伴った検査が義務付けられていなかったことにより、キャンプ・ハンセン、普天間、嘉手納での感染につながり、ウイルスはキャンプ・コートニーやキャンプ・フォスター、その他の米軍施設にも広がり、沖縄全体の感染拡大の確率を増大させました。

 玉城デニー知事は、8月1日から15日までの沖縄県緊急事態宣言を発表しました。感染者数が非常に多いことから、県は、警戒レベルを第3段階(最高レベルは4)としました。

 もちろん、第1波の時に経験したように、ロックダウンをすれば全体の感染者数は減るでしょう。しかしそれはまた、県民の生活、雇用、生計に大きな影響を与え、経済全体を脅かしてしまいます。

 「感染拡大をできるだけ抑えながら、社会経済活動を両立させる」と安倍晋三首相が6日に発言をしましたが、実は私たちには、そのためにできる単純明解な手段があります。

 英国やドイツのいくつかの地域では、旅行者が新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるための「PCR検査」が行われています。日本では現在、成田、羽田、関西国際空港で帰国者に検査を義務づけていますが、沖縄でもこの検査を用いることで、沖縄への訪問者全員が検査を受け、ウイルスを持っている人を特定することが可能となります。

 さらに、PCR技術の進歩により、現在では「集団テスト」戦略が可能になり、全体の検査数を大幅に増やすことができるとともに、どこでも検査ができるようになりました。

 英国のDnaNudge社は、その場で90分で結果が出るNudgeboxという検査機を開発しましたが、これは検体を研究施設に移動させる必要がありません。このように、沖縄に到着した訪問者が新型コロナウイルスに感染していないことを確認したければ、それを確認できる手段はすでに揃(そろ)っているのです。陽性の場合、県内で医療や隔離処置を受けることになるでしょう。陰性の場合は、そのまま県内で休暇を過ごすことで、県内企業・産業を応援することにつながります。

 今後私たちは、この新型ウイルスと何年もの間共存することになるでしょう。一方で、ワクチン接種が有効に機能するかどうかは、まだ分かっていません。

 したがって、県民を守ると同時に沖縄の繁栄を実現するためには、ただ一つの方法しかありません。1に検査、2に検査、3に検査です。
 私は、県が最新の技術を駆使して、新型コロナウイルス陽性者を早期に特定するための検査能力を高めることを強く求めます。これにより、県民を守り、沖縄県にとって、数カ月先、数年先までかかる費用を節約することにもなるでしょう。今すぐに検査を導入することで、第3波、第4波の発生を抑制・防止することができ、大きな経済的ダメージから沖縄を救うことができます。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、沖縄県の取り組みを引き続き全力で支援していきます。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園理事長、沖縄科学技術大学院大学学長 ピーター・グルース博士
2020年8月9日

琉球新報のウェブサイトで本記「コロナ緊急提言 入域時検査の強化を ピーター・グルース沖縄科学技術大学院大学長」を読む。