「沖縄は都市封鎖を実施なしなら死者2万人も」OIST学長特別寄稿(琉球新報)

 

政府の最も重要な役割は、市民の命を守ることです。通常、これは市民の安全を確保し、独立国家を維持することと定義されていますし、また、現代社会では、人民を保護し、命を救うために高度な医療システムを提供することも含まれているでしょう。

 一方、沖縄は、健康長寿の割合が高いことが世界でも知られています。そんな沖縄の健康・ソーシャルケアのインフラは世界に誇れるものかもしれません。

 平常時にはそうでしょう。しかし現在、事態は平常時からはほど遠い状況です。

 20日、玉城デニー知事が発表された「沖縄県緊急事態宣言」は、困難ではありますが必要な決断であり、科学的分析に基づいています。

 新型コロナウイルス(COVID19)のパンデミック(世界的流行)により、沖縄においても多くの人の命が危機に面しています。

 実際問題として、高齢者が多いということは、ウイルスに脆弱(ぜいじゃく)である層が多いということでもあります。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)でシモーネ・ピゴロッティ准教授らが行った「新型コロナ感染拡大予測モデリング研究」では、沖縄県が、封鎖措置前の武漢と同じ感染拡大率に直面していることを確認しました。ヨーロッパでの都市封鎖による効果を示すデータを見ると、現在県内で自粛措置が行われていることを勘案しても、新型コロナウイルスの感染を抑えるには現在の対策だけでは十分ではありません。

 同研究では、現在の入院率の分析により、先月、各感染者が平均で2・5人にウイルスを感染させたと推定しました。この数を1未満に減らすことが、前例のない危機から私たちを引き戻すための鍵となり、その実現のためにはより強力な封鎖が不可欠です。もし封鎖がされない場合、同分析では、県内で年末までに累計で1万4千人から2万人が死亡し、感染のピーク時には約2700の集中治療ベッドが必要になると予測しています。

 OISTは日本、そして世界の50を超える国と地域からトップレベルの科学者を集めています。私たちは世界中の国々におけるCOVID19への対応を分析することで、沖縄での感染の影響を最小限に抑えるための最適な方法について提言する能力を有していると考えています。

 沖縄における重症患者の病床数が限られており、これを急増させることができないことを鑑みると、まずは感染拡大を食い止めるための対策が急がれます。

 さらに、沖縄においては検査率が非常に低いことも憂慮しています。深刻な症状のある患者のみを検査していると、新たに感染した患者の多くが検出されないままになります。

 他国での発表データに基づき、沖縄の真の感染率は最大50倍にまでなると試算しています。ウイルス感染者は、本人が知らないうちに周囲にウイルスを広めています。

 私たちが行った科学的な分析結果により、沖縄県民の皆さまに、即時に対策を取るべきであることをお伝えしたいのです。早急に「ロックダウン(都市封鎖)」を行い、新たな感染を食い止め、感染率の曲線を平らにすることが必要です。県内での感染率を低下させるためには、日常生活を大幅に制限するロックダウン以外の方法は考えられません。最短でも今から5月6日までの期間ロックダウンを継続する必要があります。

 知事も発表されたように、ロックダウンでは可能な限り家に留(とど)まり、外出は食料品および医薬品の購入と日々の運動の必要最低限にとどめ、集団を避けなければなりません。

 沖縄を訪れる観光客の数が大幅に減少したことにより、ビジネスはすでに実質的に停滞していますが、店舗、飲食店は閉鎖する必要があります。

 私たちにはまだ、即時かつ厳粛な封鎖措置により、年内の死者数を600人まで減らせる可能性が残っています。ただ、ロックダウンの開始が5月1日まで遅延した場合、新型コロナウイルス関連の死者数は4000人になることが示唆されています。

 私たちは科学者です。

 科学者の責務は、入手できる証拠と健全な方法論に基づき社会に適切なアドバイスを提供することです。私たちには、アドバイスを提供することしかできませんが、世界中の多くの国における新型コロナウイルスへの対応を分析した結果、その影響を可能な限り抑えるためには、検査能力を大幅に向上させ、至急、集中治療病床数を増やし、そして何よりも、市民が可能な限り家に留まることで感染をストップさせることが、今最も必要であるということをここで繰り返しお伝えいたします。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園理事長、沖縄科学技術大学院大学学長 ピーター・グルース博士 2020年4月23日

琉球新報のウェブサイトで本記事『「沖縄は都市封鎖を実施なしなら死者2万人も」 OIST学長特別寄稿』を読む。