新たな日常について:経済

 新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延と今後も起こり得る感染者の急増を、世界の国々は固唾を飲んで見守っています。

 このウイルスは、世界の人々の健康にとって破壊的なものであると同時に、世界経済をも危機に陥らせています。

 多くの国が急速かつ前例のない不況に見舞われ、大変悲しいことに解雇や失業につながっています。

 ここ数週間で、4,000万人以上のアメリカ人が失業手当を申請しています。 日本での影響は米国ほどの規模ではないものの、推定では最大100万人の雇用損失が予測されています。

 景気の下降を和らげるため、政府はより強力な雇用助成金、課税猶予期間、苦境に瀕している企業への金融支援を提供しています。

 サービス業、特に旅行・観光産業は非常に大きな打撃を受けています。直接的または間接的に観光によって支えられている産業は、沖縄県のGDPの最大25%を占めています。従って「新たな日常」を確立する必要性は、沖縄県が経済基盤の拡大や多様化に向け、確固たる意志を持って踏み出す必要性を示しています。

 さて、どのような代替案を検討できるでしょうか?

 新型コロナのパンデミックは、グローバル・サプライチェーンがいかに脆弱であるかを露呈しました。 少数の限られたサプライヤーに依存し、一国に集中するビジネスは、非常に脆弱です。

 元米国財務長官のローレンス・サマーズ氏は、「経済戦略では、短期的な商業的利益をあまり重視せず、長期的な戦略的利益により大きな注意を払う必要がある」と述べています。 サマーズ氏は弾力性が必要であることを強調し、「中国や仮想敵国に商品を依存しないことが重要になる。」と各国に助言しました。

 その一例がテクノロジーです。中国は、将来不可欠な5Gネットワークのテクノロジーの開発と展開を支配しています。

 COVID-19の蔓延は、新たなテクノロジーのより迅速な採用を促進するように見えます。

 ビデオ会議、仮想教室、遠隔医療すべてが、かつてないペースで成長しており、自動化が急速に拡大しています。このこと自体は起業家に機会を創設するものです。しかしながらこの問題について私が話をすると、多くの方が、日本の予算はすでに過剰に増大し、景気刺激策は借金に依存していることを指摘します。

 消費を賄うために借りることは本来、持続可能な方法とはいえません。 しかし、より高いリターンを得る方法で投資が行われ、借金にかかるコストに対応できる方策を提供するならば、それは将来に向けてより前向きで持続可能な道を示すものとなるでしょう。

 明るい未来に向けて沖縄はどのような道を選ぶべきでしょうか?

 沖縄県の富川盛武副知事は、「10年先を見据え、技術革新のためにOISTと協力して沖縄が自力で発展できるようにする必要がある」と語りました。

 現在県は、世界水準の観光業、航空関連産業クラスター、 国際情報通信拠点、 沖縄県とさらなる広域向けの新たなものづくり産業、沖縄とアジアを結ぶ国際競争力ある物流拠点という5つの重点戦略を提案しています。

 これらの重点戦略エリアはすべて、COVID-19以前に決定されたものですから、

 今の状況を鑑みると、エリアの見直しが必要であることは明らかです。 沖縄はハイテク産業を発展させることで産業基盤を広げることができます。 OIST学長として、私は副知事の発言に100%同意しており、支援とパートナーシップを提供することも可能です。

 世界中で最も成功しているクリエイティブなハイテク集団を分析すると、そうした集団は、知的センターの近くに創設されたときに繁栄するということが示されました。最高の頭脳から生まれたアイデアを、イノベーションや最先端の製品に変換させることができるからです。

 OISTの強みは、学術機関であるというだけでなく、応用研究やスタートアップ企業を通じて優秀な人材が沖縄に来て働くことを引きつける磁石のような役割を果たせる点です。

 私たちは今、恩納村と沖縄県と共に、OISTキャンパスのすぐ北に、環境に配慮しながら設置する新たなハイテク・イノベーションパークという将来計画について話し合っています。

 このパークでは、先進技術を用いたり開発し、世界にとって今必要とされている持続可能な開発目標に貢献できるでしょう。この目標に向け、必要なスタートアップ企業の資金調達を支援するベンチャーキャピタルファンドについて投資家と話し合っています。米国における新規雇用のうち75%は、新規スタートアップ企業が生み出しています。 十分な資金、献身、忍耐をもってすれば、COVID-19危機は、沖縄に新たな機会をもたらすでしょう。 OISTは、この機会が実を結べるよう、参画していくことを心より望んでいます。

学校法人沖縄科学技術大学院大学学園理事長、沖縄科学技術大学院大学学長 ピーター・グルース博士 2020年6月21日

琉球新報のウェブサイトで本記事<新型コロナOISTによる洞察>8 沖縄の新たな未来 ハイテク発展へ学術機関と連携をを読む。