再生可能エネルギーの出力変動リスクを予測可能に

発電量と気象に関する膨大なデータを基に、送電網の変動を抑え、風力発電所の最適な設置計画に役立つ、新たな物理モデルを開発しました

気候変動に左右されにくい発電を実現するうえで重要な課題の一つが、再生可能エネルギーによる大規模出力変動リスクへの対応です。タービンや蓄電池の技術改良が進んだとしても、突風や大気変動による、発電量の急激な増加には対応しきれません。こうした過剰発電は、発電設備の大型化・高効率化や発電所の大規模化・増加による風力発電の占める割合が高まるなか、送電網全体に及ぶ恐れがあります。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)非線形・非平衡物理学ユニットの研究チームは、学術誌『PRX Energy』に発表した論文で、個々の風力タービンや発電所、発電所の集まり、さらには送電網全体の電力変動を予測する新しい統計解析手法を提案しました。この手法により、エネルギー政策の立案者やエンジニア、送電網の運営者は、風力発電に伴うリスクを理解し、不安定な発電を予測するための強力なツールが得られます。

「私たちの統計解析により、発電所の設計者は、現在あるいは将来のタービンや発電所の配置に応じて、電力変動リスクの予測モデルを構築できるようになります。ある意味で、いわば金融のリスク予測に少し似ています」と、筆頭著者のSamy Lakhal博士は話します。

幅20キロメートル規模の“物理実験場”の乱流から電力変動リスクを読み解く

統計モデルを構築するために用いたデータは、米国で20キロメートルにわたって設置されている80基の風力タービンから得られた風況と発電量を、5年以上にわたり10分ごとに収集したものです。責任著者のマヘッシュ・バンディ教授は次のように説明します。

「私たちは、風力発電所が単なるタービンの集まりではなく、一つの乱流システムのように振る舞うことを発見しました。大規模な電力変動は大気の乱流と強く相関しており、それが発電所全体の発電量の変動の原因となっています。そして、その相関は風下の発電所や電力網全体にも広がっています。」

この統計モデルを使うことで、発電事業計画者は、既存の風力タービンや発電所だけでなく、将来の開発計画においても、出力変動リスクを高い精度で評価できるようになります。また、新規施設を電力網に接続する際に生じる電力変動リスクの評価にも活用できます。

分散配置と連携の強化がカギ 

再生可能エネルギーは、2026年末までに、世界の発電量において石炭火力を上回ると見込まれています。大規模な風力発電が各地で相次いで電源網に接続される中(昨年だけで165ギガワット分の風力発電設備が新たに導入されました。これは前年比40%増に相当します)電力の急激な変動リスクへの対応は、一段と差し迫った課題となっています。 

Lakhal博士は次のように結論付けています。「過剰発電のリスクを抑えるうえで最も有効なのは、風力タービンを地理的に分散配置することです。タービンや発電所を広い範囲に配置することで、大規模な出力変動を抑えることができます。また、発電方法を多様化することも有効です。今後より多くの発電設備が導入されるなかで、送電網の運用者と発電事業者の連携強化がますます重要になります」 

「再生可能エネルギーは今後さらに導入が進みます。このモデルによって正確な予測があれば、大規模導入に伴うリスクをより適切に管理できます。そして、世界的に開発が進み、分散した多様な電源が送電網で繋がっていくことが、将来の電力変動に対する緩衝材として働くはずです。」

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