2021-06-08

持続可能な未来に向けて

2015年、国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が全会一致で採択されました。このアジェンダでは、地球とそこに住むすべての人々のための平和と繁栄という共通目標を掲げた行動計画が示されています。中核をなすのが、17の持続可能な開発のための目標(SDGs)で、ジェンダー平等や貧困の撲滅、陸上資源の保全など、広範な分野を網羅しています。

国連がまとめた17の持続可能な開発のための目標は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなし、地球とそこに住むすべての人々の平和と繁栄のための共通目標を掲げている

沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、科学者、スタッフ、学生らが、研究やアウトリーチ活動、さらに沖縄県内の自治体や県内外の産業界とのパートナーシップを通じて、これらの目標達成に向けた活動に貢献しています。

OIST SDGワーキンググループ : 後列左から学長室戦略リレーションシップスペシャリストの下地 邦拓さん、メディア連携セクション・マネジャーの大久保知美さん。前列左から ミサキ・タカバヤシ副研究科長、セシリア・ルー シニアアナリスト(IR及び企画)、ローレン・ハ准副学長(技術開発イノベーション担当)

気候変動や新型コロナウイルス感染症などに関するOISTの研究

OISTの海洋気候変動ユニットを率いるティモシー・ラバシ教授は海水の酸性化や温暖化、そして沿岸開発の影響により海洋がどのように変化するかを理解しようとしています。

「私たちは、特にカクレクマノミとハタについて調べています。ハタは、沖縄の文化や経済において重要な魚類ですが、ハタを飼育している養殖場では、熱波の頻度が増えることにより影響を受ける可能性があります。私は沖縄の養殖場と協力して、今後数十年の間に起こると予測される変化に対応するため、バイオマスの増産に取り組んでいます。また、カクレクマノミは、サンゴ礁魚類全般が気候変動によってどのような影響を受けるかを調べるのに適したモデル種であり、カクレクマノミが海水温の上昇にどのような反応を示すかを調べています」とラバシ教授は説明します。

マリン・サイエンス・ステーションでカクレクマノミを観察する海洋気候変動ユニットの魚類飼育担当者であるラドミラ・ネイマンさん

OIST全体の科学者が、さまざまなSDGsに貢献しています。2020年には、新型コロナウイルス感染症の流行への対策に重点が置かれ、全学的にさまざまな研究や取り組みが行われました。その研究内容は、感染拡大モデリングから検査法(PCR検査および抗体検査の両方)の開発、ロックダウン(都市封鎖)の社会的影響の理解まで、多岐にわたります。海洋生態物理学ユニットでは、海洋中の炭素を取込む細菌の役割について研究しています。この理解を深めることで、海洋の炭素循環とその気候変動との関連性を解明することができます。また、エネルギー材料と表面科学ユニットでは、太陽電池モジュールに関する世界最先端の研究を行っており、現在利用可能なものよりも大きさ、電力、安定性を向上させた次世代の太陽電池を開発しています。

質の高い教育

研究と並行して、OISTのメンバーは、アウトリーチ活動を行い、地域社会や国際社会に科学や持続可能な未来に関心を持ってもらうよう働きかけています。最近の取組みの一つに、OIST研究科がハワイの非営利団体Kuaʻāina Ulu ʻAuamo(KUA)と共同で行っている活動があります。沖縄とハワイの学生を対象としたこの取組みは「シマ(沖縄・ハワイSTEM教育コラボレーション)」と名付けられ、伝統的な天然資源の管理方法を中心とした異文化間の学習交流を進めています。

OIST副研究科長であるミサキ・タカバヤシ博士は、次のように語っています。「島民たちは、限りある資源の中で生き延びるための知識を何世代にもわたって蓄積し、生活を維持してきました。そのような意味では、島の持続可能性は、世界の国々にとってSDGsの小宇宙的な模範となります。島の持続可能性において最も重要なことは、すべての資源の持続可能性-環境の持続可能性、経済の持続可能性、人材の持続可能性など-から相乗効果を生むことです。沖縄は何千年もの間、豊かな島として繁栄してきました。私たちは、沖縄の住民として、島の祖先が行ってきた持続可能な活動を継承していく必要があるのです。」

OISTが行っているその他のアウトリーチ活動には、研究科が沖縄の女子中高生を対象に科学の講義やワークショップを毎年行う「HiSci Lab (ハイサイ・ラボ)」や、OISTの所在地である恩納村内の小学校の理科の授業の一環として、サンゴ礁の健康状態をモニタリングするというSDGsに関連した活動を導入しカリキュラムを充実させた「恩納村・OISTこどもかがく教室」などもあります。

学生の貢献

OISTの学生で、海洋生態物理学ユニットに所属するオティス・ブラナーさんは、何年も前からSDGs関連の活動に貢献しています。彼は、沖縄周辺の深海熱水噴出孔の掘削が与える影響について研究しており、最近では、沖縄固有の生態系に及んでいる脅威を広く伝えるため、琉球大学でオンライン講演会を行いました。

オティスさんは研究以外の分野でも、「UMIプロジェクト」を立ち上げました。UMIとはUniversity Marine Initiative(大学マリーンイニシアティブ)の略で、頭文字をとると日本語の「海」と同じ綴りになります。「UMIプロジェクトは、3年ほど前に立ち上げてから、どんどん拡大しています。当初は、OISTの海洋科学者と愛好家たちを結びつけるために始めたものです」とオティスさんは説明します。

カヤックで恩納村周辺の海域を探索する大学マリーンイニシアティブ(UMI)のメンバー

UMIプロジェクトの現在の活動は、地域住民の海洋環境保全への意欲を高めることに重点を置いています。そのため、オティスさんをはじめとするメンバーは、リーフウォークや市民科学研究活動の他に、学校での授業なども行っています。沖縄で育った子どもたちの中には、これまでサンゴ礁に注意を払ったことがない子どももいるそうで、初めてサンゴを身近に見た子どもたちの様子を見ると、やりがいを感じるそうです。

「持続可能な開発目標は、沖縄及びOISTのある恩納村にとって優先事項の一つであり、OISTにとっても同様です。沖縄は急速に発展していますが、数十年で急速に発展を遂げるよりも、持続可能な方法で発展するようにしなければ、取返しのつかない損害がもたらされることになります。つまり、UMIプロジェクトの活動は、それを防ぐ大きな影響を沖縄にもたらすことができるのです。」

この他にも、OISTのメンバーたちは、ボランティア団体である「POWERクラブ」や「Eco club」などのグループを通して定期的なビーチクリーン活動や衣類の寄付に加え、地元企業を支援するイベントなど、沖縄の様々な場所で積極的に活動しています。

グリーンナッジ

OISTは、国連環境計画(UNEP)の「Green Nudges(グリーンナッジ)」イニシアチブに参加しています。この活動の目的は、学内の人々に環境に優しい習慣や生活様式を取り入れてもらうことです。

ナッジ理論とは、行動科学の考え方の一つで、人が前向きな判断をするようにさりげなく働きかけるもので、小さな行動が人々の行動に大きな影響を与えるという考えに基づいています。グリーンナッジは、様々な手法を用いることで持続可能な行動を促し、長期的な環境価値を浸透させることができます。

OISTの「グリーンナッジ」イニシアチブは、環境に優しいキャンパスを作り、日々の活動をより持続可能なものにし、二酸化炭素排出量を削減することを目的としています。この取り組みは、学内や地域社会における環境問題を特定し、創造的な解決策を生み出すことを目的としています。

参加方法

現在OISTで行われているSDGsプロジェクトへの参加や支援を希望される方、またはOISTメンバーと共に独自のSDGsプロジェクトを立ち上げたいという方は、こちらをご覧ください

(ディッキー・ルシー)

広報や取材に関して:media@oist.jp