御手洗哲司博士 米国生態学会による2011年優秀論文賞を受賞

この度、米国生態学会(ESA)は、沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)若手代表研究者(海洋生態物理学ユニット)の御手洗哲司博士らに、理論生態学分野の2011年優秀論文賞を授与すると発表しました。

 この度、米国生態学会(ESA)は、沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)若手代表研究者(海洋生態物理学ユニット)の御手洗哲司博士らに、理論生態学分野の2011年優秀論文賞を授与すると発表しました。

 2010年3月、御手洗博士は、米国の学術誌「Ecology Letters(エコロジー・レターズ)」に、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者と共に「Turbulent dispersal promotes species coexistence(幼生の乱流輸送による生物の共存)」と題する論文を発表しました。単純な生態系モデルによると、資源を共有する生物は、より多くの子孫を残すことができる種がその他の種を絶滅に追いやってしまうことになります。しかし、現実には、多くの生物が共存しています。この論文で御手洗博士らは、「乱流による共存」という新たな生態系モデルを提案しました。これは、浅瀬に生息する海洋生物の幼生が、海流の渦によって複雑に輸送され、様々な種の共存を可能にすることを示しています。多くの海洋生物は成長すると広い範囲を移動することはありませんが、幼生期は海流によって輸送されます。幼生の輸送パターンはとても変化に富み、また、 そのパターンは種ごとに大きく異なります(OISTedu YouTube チャンネルで動画をみることができます)。御手洗博士らの研究グループは、この幼生供給の複雑さがいかに種の共存を促し、長期にわたる生物社会の変動に結びついているかを証明することに成功しました。

 米国生態学会(ESA)は1915年に創設された非営利組織で、生態学の進歩と普及を図ることなどを目的としています。その会員数は一万人以上にのぼります。同学会の理論生態学分野は1993年に設立され、ESAの数ある研究分野の中でも最も会員数を伸ばしている分野のひとつです。同分野は、生態学の理論研究の促進、研究発表会の開催、理論研究者と実験・フィールド研究者の連携、また、理論生態学による様々な問題の解決の推進を目指しています。

発表論文
1) 発表先および発表日: Ecology Letters (エコロジー・レターズ)(13:360-371)
オンライン版:2010年2月19日
印刷版:2010年3月

2) 論文タイトル:
Turbulent dispersal promotes species coexistence (幼生の乱流輸送による生物の共存)

3) 著者: Heather A. Berkley, Bruce E. Kendall, Satoshi Mitarai and David A. Siegel

御手洗哲司博士は米国ワシントン大学で博士号(流体力学)を取得後、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で、海洋中の大小様々なスケールの乱流が生物現象に及ぼす影響を解明する研究を行いました。沖縄では、最新のモデルと観測技術を組み合わせ、沖縄近海の海洋環境予報システムを構築し、沖縄近海の幼生輸送パターンの解明を目指しています。御手洗博士らのグループは、沖縄東シナ海側の深海での幼生輸送を課題とし、キヤノン財団による2011年の研究助成プログラム「理想の追求」の研究助成金(3800万円)を取得しました。
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  プレスリリース 

沖縄科学技術大学院大学について
沖縄科学技術大学院大学は、沖縄科学技術大学院大学学園法に基づき開学準備が進められている新しい大学院大学で、沖縄において世界最高水準の科学技術に関する教育研究を行い、沖縄の自立的発展と世界の科学技術の向上に寄与することを目的としています。現在までに29の研究ユニット(研究者約180名)が発足し、神経科学、分子科学、数学・計算科学、環境科学の4分野において、学際的な研究活動を展開しています。また、国際ワークショップやコースの開催など、学生や若手研究者の育成にも力を入れており、これらの取組は国際的にも認知されています。機構は、平成24秋の大学院大学の開学(学生受入れ)に向けて、平成23年3月に文部科学大臣に対して設置認可申請を行いました。

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