4.11 研究倫理、法令遵守及び利益相反の防止

研究活動は社会からの信頼と負託の上に成り立っていることを認識し、研究者は、常に正直かつ誠実に判断、行動し、責任ある研究行為を実施しなければなりません。本学は、科学者の行動規範(平成25年 日本学術会議)及び研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年 文部科学大臣決定)、その他関連する指針等に沿って、責任ある研究行為を推進するとともに研究活動における不正行為に適切に対応するための仕組みを整備します。

特定の実験は、事前に関連諮問委員会審査され、事前にプロボストの承認を得ることが必要です。また、研究活動で利用する試料・機器の中には、法令やガイドラインで入手、取扱い、保管、記録、廃棄等が規制されているものがあります。これらは、関連する法令やガイドラインに沿って適切に処理されなければなりません。第22章「利益相反防止及び安全保障輸出管理」に規定された本学の方針を前提に、研究者はコンサルティングやその他の外部のパートナーとの活動に携わる権利を有しますが、利益及び責務の相反を防止しなければなりません。

4.11.1 責任体制

4.11.1.1 研究倫理最高管理責任者
理事長・学長は、最高管理責任者として、本学において責任ある研究行為が実践される最終責任を負います。研究倫理最高管理責任者は、不正な研究行為を発生させる要因を除去し、十分な抑止機能を備えた環境及び体制の構築を図るとともに、不正行為が生じた場合には、必要な措置を厳正かつ適切に講じなければなりません。

4.11.1.2 研究倫理教育責任者
プロボストは、研究倫理教育責任者として本学における研究倫理教育の推進を統括し、研究活動に関わる者を対象に研究者倫理に関する教育を定期的に行わなければなりません。

4.11.2 研究倫理教育

本学に属するすべての研究者(教員、ポストドクトラルスカラー、スタッフサイエンティスト、リサーチスペシャリスト、技術員、特別研究員、サイエンス・アンド・テクノロジー・アソシエイト)、研究支援職員及び学生は、研究倫理教育を受講しなければなりません。研究倫理教育は、少なくとも5年に1回以上受講する必要があります。それ以外の部署の職員も研究倫理教育を受講することが強く奨励されます。共同研究等のため外部の研究者や学生が一時的に本学で研究活動を行う場合、受け入れ研究ユニットや関係セクションは、当該研究者及び学生等が研究倫理教育を受講することを推奨します。教員担当学監オフィスは、研究倫理教育のための教材作成や受講記録についてプロボストを支援します。

4.11.3 研究データの管理及びラボノート

研究データ及びラボノートはそれを得た研究者にとってのみならず科学界全体にとっても貴重な資産です。全ての研究者には、適切なバックアップと共に、安全かつ識別可能な方法でデータを保存し、必要な場合は開示することが求められています。ラボノートや電子的なデータファイルを含む、本学におけるいかなる研究の結果も、概して本学の資産とみなされます。各研究者は、各々の研究結果が当該研究分野における最高の管理基準に沿って適切に記録されていることを確保しなければなければなりません。これは、将来の検証のための、研究データとラボノートブックの確実な保管を伴います。教員は、各々のユニットに所属する全ての研究者に対し、研究データの記録と保管に関して明確に指導しなければなりません。データのねつ造や改ざん及び盗用は容認されません。公開データベースでの研究データの普及は奨励されますが、人を対象とする研究に関するデータの扱いには、プライバシー保護のため最善の配慮がなされなければなりません。研究者が所属研究ユニットを去る場合、どのような研究データを持ち出して良いかどうかについて、 担当教員と合意を得る必要があります。教員又は研究スタッフが本学を去る場合、研究データの所有権は本学にとどまりますが、教員担当学監は当該教員等の他所での研究の継続を妨げないように研究記録の移管について適切に調整を行います。詳細については、「本学研究データ、ラボノート、研究試料及び化学物質の保存および開示に関するガイドライン」を参照すること。

4.11.4 研究試料の管理

遺伝子サンプルや遺伝子組換え生物のような研究試料は、科学界全体にとって 貴重な資源です。多くの学術雑誌や研究資金助成機関は、研究成果が公にされた後、当該研究試料を公に利用可能とすることを求めています。研究試料を保存する場合は、その性質に応じて極低温等の適切な措置を施さなければなりません。また、他の研究者から配布請求があった場合は、適切な手段を経る必要があります。研究試料は、当該論文や学会発表から、原則として少なくとも5年間保管しなければなりません。研究試料を提供又は受領する際には、多くの場 合、当事者間の試料提供合意(MTA)が必要です。研究者が別の機関に異動するにあたっては、研究試料の分配に関し、前もって合意がなされていなければなりません。詳細については、「本学研究データ、ラボノート、研究試料及び化学物質の保存および開示に関するガイドライン」を参照すること。

4.11.5 研究計画

教員は、特定の研究計画(放射性同位元素、遺伝子組換え生物、病原体等、動物、人又はヒト由来試料を伴う研究計画)は、研究開始前に関連する諮問委員会に承認を受け、さらに、その研究計画に沿って研究ユニット・メンバーが研究を実施していることを確認する必要があります。承認が必要な研究計画については、第13章安全衛生及び環境保護を参照してください。

4.11.6 研究成果の発表

本学で行われた研究の成果は、学術雑誌論文、学会発表、及び同様の適切な 場において、迅速に公表されなければなりません[Link: 1.3.1]。時として、否定的な結果が重要な知見をもたらすこともあります。研究成果を発表する にあたって、全ての研究者は、ねつ造、改ざん、盗用、二重投稿、不適切なオーサーシップ、著作権保護された資料の承諾又は出典明示無しの使用といった違反が無いことを保証しなければなりません。

沖縄科学技術大学院大学機関リポジトリ(以下「OISTIR」という。)は、本学の知的成果物へのパブリックアクセスを可能とするプラットフォームです。図書館長の承認がある場合を除き、出版物及びその他研究結果はOISTIRに登録されなければなりません。OISTIRへの登録者は、沖縄科学技術大学院大学機関リポジトリ運用指針に従い、オープンアクセスの環境を保つことが求められます。

無料閲覧可能な学術雑誌への発表は奨励され、発表にあたっては中央予算から支援を受けることができます。

4.11.7 輸出入法令の遵守

大多数の国々と同様に、日本国は、多くの物品の輸出入に関し、規制、条件付け、関税を課しており、これには、本学で行われるような基礎研究において使用される試料や機器設備も含まれます。ソフトウェア、 製品のノウハウ、また、使用マニュアルにまで及ぶような知的財産を含む技術の移転も、物理的、デジタル、口頭かどうかを問わず、国内法、関連する国連決議、輸出入に関する法令に沿って規制・管理されます。学生の入学、教職員の採用、共同研究、国際交流など、海外からの研究者やインターンの受け入れを含め、大学のさまざまな活動も輸出規制の対象となる場合があります。国は、生物、遺伝子組換え生物を含む各種品目、装置、物質、情報及び試料の輸入についても管理しており、また、それについて許可が必要とされる場合があります。大学における研究活動に使用される物品は、課税が免除されることもありますが、関税や定期的な官公庁への報告が課せられる対象となることがありますので注意が必要です。意図的か非意図的かどうかを問わず、国内の法令や関連する国連決議に違反しないよう、細心の注意が払われ、これらの規則のコンプライアンスが十分確保されるよう、安全保障輸出管理責任者に助言を求めなければなりません。

詳細参照:
政府の安全保障貿易管理ウェブサイト及び、
外国為替及び外国貿易法
関連する国連決議
OISTの安全保障輸出管理規程

4.11.8  利益及び責務の相反の防止

教員は、第22章「利益相反防止及び安全保障輸出管理」に詳述されているような、真の利益相反につながる、あるいは利益相反と受け取られるおそれのある状況は、全て開示する必要があります。

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