沖縄県民に対する新型コロナウイルスワクチンの有効性を評価

OISTと那覇市医師会による新型コロナウイルス関連共同研究が開始

(共同プレスリリース)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)と一般社団法人那覇市医師会は、この度、沖縄県民に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性を評価することを目的とした共同研究を行うこととなりました。

研究の背景

現在、パンデミックを収束させるため、世界中でCOVID-19ワクチンの接種が進んでおり、日本においても迅速なワクチンの普及が喫緊の課題となっています。前例のない速さで開発が進んだCOVID-19ワクチンですが、このワクチンの接種によって高い感染予防効果が獲得されるということが最近の研究で徐々に明らかになっています。しかし、COVID-19ワクチンに関する基礎研究は十分でなく、ワクチン接種によって新型コロナウイルスおよびその変異株に対する長期的な感染予防効果が獲得されるのか、またワクチンの有効性と副反応の個人差がどの程度生じるのかについてはほとんど分かっていません。これらについて理解するためには、COVID-19ワクチン接種によって誘導される新型コロナウイルスに対する抗体やT細胞(免疫細胞)などの免疫反応を調べることが重要です。

OISTの免疫シグナルユニット(代表研究者:石川裕規准教授)の研究者らは、これまでに那覇市医師会と共同で、COVID-19に罹患したことのない健康な沖縄県民の新型コロナウイルスに対する免疫(抗体反応とT細胞反応)の測定を行ない、多くの沖縄県民が新型コロナウイルスに反応するT細胞反応を獲得していることを明らかにしてきました。その研究の延長線上にある本研究では、ワクチン接種前後の新型コロナウイルスに対する免疫(抗体反応とT細胞反応)およびワクチンの副反応を経時的に測定することで沖縄県民に対するCOVID-19ワクチンの有効性を評価します。

本研究には、OISTの二つの研究ユニット(免疫シグナルユニット(研究代表者:石川裕規)と生体分子電子顕微鏡解析ユニット(研究代表者:マティアス・ウォルフ))、那覇医師会に加盟する7つの医療機関(曙クリニック(代表:玉井修)、新川クリニック(代表:宮城政剛)、きなクリニック(代表:喜納美津男)、那覇西クリニック(代表:玉城研太朗)、八重洲クリニック(代表:友利博朗)、山城整形外科眼科医院(代表:山城千秋)、那覇市医師会生活習慣病検診センター(代表:崎原永辰))およびKIN放射線治療・検診クリニック(代表:金内厚)が参加します。

 

研究内容

血液検体を用いた免疫反応の解析は、OISTの二つの研究室(免疫シグナルユニットおよび生体分子電子顕微鏡解析ユニット)で行われます。新型コロナウイルスおよびその変異株に対する抗体反応とT細胞反応ならびにワクチンの副反応の測定を行い、沖縄県民に対するワクチン有効性を評価します。さらに各種測定結果を比較することで、ワクチン接種前の免疫状態とワクチン副反応が、ワクチンにより獲得される新型コロナウイルスおよびその変異株に対する免疫反応とどのように関係するのかを明らかにします。本研究で得られるデータは、ワクチンの有効性および副反応の個人差がどのようにして生まれるのかを理解するための基礎的な知見となることが期待されます。

 

将来への期待等

石川准教授は、本共同研究について「COVID-19ワクチンの有効性を正しく理解することで、合理的なCOVID-19対策を講じることが可能になると考えられます。また、このような基礎研究は将来の新興感染症によるパンデミックに備えるという意味でも重要になるはずです」と述べます。

那覇市医師会理事の玉城研太朗医師は、「OISTと私ども那覇市医師会との本研究が沖縄県のみならず世界全体に明るい未来をもたらしてくれる、極めて重要な研究となるでしょう」と期待を表しています。

 

被験者

本研究では、ワクチン有効性を個人差を含めて評価するために、採血ボランティアとして研究に参加してくださる幅広い年齢層の沖縄県民100名を募集しています。本研究は既に5月12日より開始しており、これまでに那覇市の医療従事者を中心に約20名の方々に採血ボランティアとしてご参加いただいています。那覇市医師会に加盟する7つの医療機関(曙クリニック、新川クリニック、きなクリニック、那覇西クリニック、八重洲クリニック、山城整形外科眼科医院、那覇市医師会生活習慣病検診センターおよびKIN放射線治療・検診クリニックにて行われる経時的な採血(1年間に8回)にご理解とご協力を頂ける方々のご参加をお待ちしております。採血ボランティアの方には、ワクチン接種の約2カ月後、半年後および1年後の新型コロナウイルス抗体反応の測定結果をお知らせいたします。

採血ボランティアの募集は、8月31日までを予定しています。ただし100名の被験者が集まった時点で募集を打ち切らせていただきます。採血ボランティアについては、以下の電話番号、もしくはEメールアドレスまでお問い合わせください。OIST免疫シグナルユニットの研究員が対応させていただきます。

【被験者条件】

  • 日本国籍で沖縄県に居住していること
  • ファイザー製のワクチンを接種予定であること
  • 20歳以上であること
  • 献血の健康基準を満たすこと
  • 下記1〜4に該当しないこと
  1. 急性疾患もしくは重篤な慢性疾患
  2. 肝硬変、腎不全、血液疾患等の基礎疾患があり、直近のヘモグロビン10g/dl以下
  3. 免疫抑制剤を服用中
  4. 日本赤十字社の200ml献血基準を満たさない

医師の医学的判断により採血をお断りする場合もあります。

【採血ボランティアに関するお問い合わせ先】

沖縄科学技術大学院大学 免疫シグナルユニット

電話番号: 098-966-2257又は050-5477-5813   Email: meneki@oist.jp

(時間:10:00-17:00、 担当者:渡久地、湯川、平良)

研究ユニット

広報・取材に関するお問い合わせ:media@oist.jp

シェア: