ダイヤモンドは永遠の輝き:低コストで持続可能なナノデバイス

ガラスと合成ダイヤモンドのナノストラクチャー基材を効率的に作製

 

    現在、人間の髪の毛の幅よりも小さい装置が、薬物送達、半導体、燃料生産技術などのカギとなりつつあります。ただ、いまのままではこうしたマイクロ・ナノ構造物を作製するためのコストが高く、無駄も生じています。

    沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らは、マイクロ構造やナノ構造の作製時に使用可能な、ガラスと合成ダイヤモンドを合わせた新たな基材を作製しました。Diamond and Related Materials誌で発表された本論文では、この新たな基材は安価に作製でき、しかも作製途中に生じる廃棄物を最小限に抑えることが示されています。

   「人類は、数十年間にわたってプラスチックを捨ててきました。そこで私たちは、ダイヤモンドやガラスなどの持続可能な材料を利用することで、環境への悪影響を最小限に抑えようとしています。」と、本研究の筆頭著者で、数学力学と材料科学ユニットのメンバーであるストフル・ヤンセン博士が説明します。

ナノ構造を構築する

    マイクロデバイスやナノデバイスの作製のため実施されている現行のプロセスは、費用がかかる上、非効率的です。一方、天然ダイヤモンドと同じ化学構造を持つ合成ダイヤモンドは、弾力性があり、低コストで持続可能な材料です。またガラスは用途が広く、電気を通さないので、これら2つの材料を組み合わせた技術は将来有望と言えます

    研究者たちはまず、ガラスエッチングによって基材を作製しました。これは酸を利用してガラス板を50マイクロメートル(人体における細胞の一般的な長さ)の幅にまで削るプロセスです。ヤンセン博士と共同研究者のエリオット・フリード教授、ダビッド・バスケス・コルテスさん、アレッサンドロ・ジュサーニさん、ジェイムス・クウィッチンスキさんらはさらにレーザーを使用し、ガラスの片面に直径および深さ約40マイクロメートルの穿孔(キャビティ)を開けました。

    次に研究者らは、ガラスの反対側の面に175ナノメートルの厚さのナノ結晶ダイヤモンドフィルムを成長させたうえで、キャビティの先端がダイヤモンドで密封された小さなチャネルに加工しました。ダイヤモンドとガラスの組み合わせによって、生きている細胞をチャネルの中で成長させて観察できる透明な構造物を作ることができました。

 

Diamond and Related Materialsに掲載された図。(a)作製プロセスの各段階における基材断面図。 (b)ダイヤモンドで密閉されたチャネルを持つ(a)で作製されたガラス基材の暗視野光学顕微鏡写真 (c)25°の傾斜を持たせて走査型電子顕微鏡で撮影された中央のキャビティの画像。

   「この作製プロセスでは、ガラスの表面が粗くなったり不透明になったりするなど、たくさんの細かな不具合が生じました。 プロセスを最適化するため、多くの調整を行わねばなりませんでした。」とヤンセン博士は言います。

    ヤンセン博士は今後、特定の薬物だけを選別して届ける多孔質ダイヤモンドのフィルムを作製したいと考えています。研究者らはこの新たな基材の特許を申請し、商業的可能性を模索しています。

   「この種の研究は、さまざまなバックグラウンドを持つ研究者の共同努力によってのみ、実行可能です。OISTの学際性と協力的な環境があったからこそ、この仕事は実現したのです。」とフリード教授は語っています。

 

研究チームのメンバー(左から):ストフル・ヤンセン博士、エリオット・フリード教授、ダビッド・バスケス・コルテスさん、ジェイムス・クウィッチンスキさん、アレッサンドロ・ジュサーニさん

 

 

 

 

専門分野

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